実験開始20日目に、左右の複眼を黒く塗りつぶすと、昼間でも走るようになった。活動開始時刻が日々少しずつ早くなっているのがこの図からわかる。体内時計のリズムが24時間よりも短いのだろう。複眼が塗られる前はきちんと24時間周期だったから、光が体内時計のずれを補正していたわけだ。
50日目に両複眼の塗料をはがすと、1週間ほどかけて夜行性の行動パターンに戻った。この1匹だけでなく、他の15匹も同様の結果だった。
ゴキブリは左右の複眼のほか、一対の小さな単眼を頭部に持ち、光を感知できる。複眼を黒く塗りつぶしても周囲が明るいかどうかわかるはずだ。しかし、単眼で受けた光は体内時計の補正には関与していないようだ。複眼が光を感じるかどうかが大事なのである。念のため、68日目に単眼を切除してみたが、ほとんど影響はなかった。
回し車という道具を使って活動性を測定することで、単眼ではなく複眼が光を感じるかどうかがゴキブリの体内リズムの調整役だとわかったのである。回し車はすごい。単なる遊具ではない。シンプルなのに優れた測定ツールなのだ。
なお、ゴキブリはこの実験期間中、ずっと回し車に閉じ込められていた(餌も水分も回し車の中でとることができた)。ペットのハムスターのように回し車に自分で入って走っていたわけではない。
回し車は“走る”以外の
時にも使われている
ペットのハムスターは、自分で回し車に入る。しかし、ずっと走っているわけではなく、ときどき止まって周囲を眺めている。しばらくすると、思い出したかのように再び走り出す。回し車がじゅうぶんに大きいと、回し車の中でウトウトしていることもある。回し車に入っていても、常に走っているわけではないのだ。
ハムスター以外のネズミもそうである。たとえば、図6-2は、スイスのチューリッヒ大学動物病院に勤める獣医師たちが行った観察結果である。
同書より転載 拡大画像表示







