同じように、サンマも資源量が大きな魚種であり、獲り過ぎて価格が暴落しないよう計画的に生産調整をしながら漁獲してきました。それでも2015年頃までは20万~30万トンを水揚げし、最盛期の秋半ばには1尾100円という手軽な値段で店頭に積まれていました。安くて美味しい庶民の味方だったのです。
しかし近年、サンマの漁獲量が激減しています。全国さんま棒受網漁業協同組合によれば、2022年にはわずか1.8万トンと過去最低を記録、2023年は2.4万トンとわずかに増加したものの、かつての10分の1という低水準です。
海水温上昇で
マイワシやブリは豊漁に
その一方でマイワシが豊漁です。1988年に449万トンと驚異的な漁獲量を記録した日本近海のマイワシですが、その後資源量が減少し、2000年代には10万トンを切る低水準になりました。価格が高騰し、「マイワシが高級魚に」と報じられたこともありました。
しかし近年は沿岸の海水温が上昇し、マイワシにとって快適な海が北海道の道東やサハリン沿岸まで広がりました。このあたりの海は栄養が豊富で、十分な餌を得たマイワシ資源が再び増大しているのです。ちょうどサンマと入れ替わるかのように、2023年には主漁場が道東釧路沖となり、漁獲量も69万トンと、日本で最も大量に漁獲される水産物になりました。
獲ろうとすればもっと獲れるのですが、あまりに大量に漁獲すると、水揚げ後の陸上での処理ができません。サンマ同様、漁獲しすぎて価格が暴落してしまわないように、現在は生産調整をしながら間引き操業している状況です。漁業は経営効率を考えながら操業しています。資源が多すぎて価格が下がりそうなら漁獲しなくなりますし、逆に資源が減少してコスト割れしそうでもやはり漁獲しなくなります。漁獲量は資源量を表してはいないことに注意する必要があります。
『日本漁業の不都合な真実』(佐野雅昭、新潮社)
同時に、日本の中部以南の海を主な生息域にしてきたブリやサワラの漁場が北海道やオホーツク海まで北上しています。とくに天然ブリの北上は顕著です。北海道の漁獲量はここ数年、毎年1万トンを超え、日本最大の産地となりました。秋になり風が冷たくなる頃には、河川に遡上(そじょう)してくるサケを漁獲する定置網が仕掛けられますが、今ではこの定置網でサケではなくブリが大量に漁獲されるのです。
他方、肝心のサケの漁獲量は大きく減少しています。沿岸の海水温が高すぎて、低い水温を好むサケが川までたどり着けないためだといわれます。ブリが好む水温であれば、サケが帰ってこられないのは当然です。
1995年から2002年頃まで、全道で漁獲されるサケは10万~20万トンほどでしたが、北海道立総合研究機構の発表では2023年度の漁獲量は5万8000トンで、2024年度には5万トンを切りました。塩蔵サケやイクラを製造してきた道東の加工場の中には、ブリの切り身や照り焼きに切り替えるところも出ています。これまでの経験と常識では考えられない異変が出現しているのです。







