米ペンシルベニア州クレアトンのUSスチールの工場 Photo:AFP=JIJI
日本製鉄が2025年、約2兆円を投じて買収した米USスチールでは、日鉄の投資によって設備改修が進められつつある。だが、早くも費用負担急増の懸念が浮上している。USスチールが今月8日に公表した報告書で、老朽化した米ペンシルベニア州のモンバレー製鉄所への設備投資額が倍増することを明らかにしたのだのだ。実は今回のモンバレーの事例は、USスチール全体の投資額がさらに肥大化しかねないリスクを浮き彫りにしている。連載『鉄鋼 大乱戦!』の本稿では、モンバレーの投資額アップから浮かび上がった、日鉄のUSスチールとのシナジー創出に向けた「三つの不安要素」を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 今枝翔太郎)
巨額買収したUSスチールは初年度から赤字
最古の製鉄所では投資費用“倍増”
日本製鉄が巨額を投じて傘下に収めた米USスチールで、収益貢献が進んでいない。
日鉄は昨年6月、141億ドル(約2兆円)もの大枚をはたいてUSスチールを買収した。同年7月から収益貢献が期待されたものの、コークス炉の事故影響もあり、USスチールの2025年7月~26年3月の事業利益(在庫評価影響を除いた実力値)は56億円の赤字となった(日鉄の25年度決算については、特集『エネルギー危機、インフレ、人手不足で明暗!通期決算「勝ち組&負け組」【2026春】』の#3『【鉄鋼3社の最新序列】日本製鉄が大幅減益で序列激変!中東情勢の影響が長期化すれば神戸製鋼がJFEに差をつけ「2位定着」も?』参照)。
さらにここにきて、USスチールが日鉄の足を引っ張りかねない事態が明らかになった。米ペンシルベニア州のモンバレー製鉄所への設備投資額が倍増するというのだ。今月8日のUSスチールの発表によると、当初10億ドル(約1500億円)を見込んでいた投資額は、今後3年間で最大25億ドル(約4000億円)にまで膨れ上がる見込みだ。
モンバレーはUSスチールで最も古く、今回更新の対象となっている設備は稼働から90年近くが経過している。モンバレーを訪れたことのある日鉄関係者は「あんなに古い設備で今まで作れていたのが不思議なくらいだ」と指摘する。
実はモンバレーは、設備の老朽化以外にも懸念材料を抱えている。そのため、社内から「費用が4000億円で済むとは思えない」(日鉄のグループ会社幹部)との声が上がっているのだ。
日鉄は28年までに米国内で総額110億ドル(約1.7兆円)の投資を行うとしており、29年以降の投資も含めれば、USスチールに総額140億ドル(約2兆円)以上の成長投資を計画している。モンバレーの設備更新は、その壮大なプランのごく一部でしかない。だが次ページで述べるように、今回のモンバレーの事例は、USスチール全体の投資額がさらに肥大化しかねないリスクを浮き彫りにしている。
次ページでは、モンバレーの投資額アップから浮かび上がった、日鉄のUSスチールとのシナジー創出に向けた「三つの不安要素」を明らかにする。







