Photo by Masato Kato
水力と石炭火力の「二枚看板」を発電構成の特徴とするJ-POWER(正式名称:電源開発)が、2026年4月に新たな社長を起用した。大間原子力発電所の運転開始計画、政府公募案件で落札した洋上風力事業の推進など課題が山積する中、足元では脱炭素事業の方向転換の兆候がにじみ始めている。長期連載『エネルギー動乱』の本稿では、新社長に就任した加藤英彰氏が描く、これからの発電事業に対する方針を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 鈴木文也)
大間原発の運転開始時期の見通しは?
遅れは業績悪化に直結
――社長に就任して2カ月超が経過しましたが、改めて経営方針をお聞かせください。
2024~26年度を対象とする中期経営計画は最終年度を迎えました。その中でも、当社にとっての最大の経営課題である大間原子力発電所(青森県大間町)が、大きなヤマ場を迎えています。昨年、基準地震動が決定し、現在はプラント建屋の審査に入っています。
年末から年始にかけて審査の見通しがつくというタイミングで、長期脱炭素電源オークションを落札しました。今後は地域社会に丁寧に説明し、ご理解をいただくという新たなステージに入ると考えています。完成に向けてふんどしを締め直し、不退転の覚悟で取り組んでいきます。
――大間原発の運転開始計画は当初は「2030年度」としていましたが、これまでに延期が示唆されていました。現時点での目標時期を教えてください。
現時点で「30年度の運転開始」という目標は取り下げていませんが、状況が極めて厳しいのは事実です。審査通過後に着工し、運転を開始するまでには膨大な工事量が必要です。そのため、具体的な運転開始時期の算出に時間を要しており、現段階での公表は時期尚早ですが、秋までには何とか皆さまにお話ししたいと考えています。
――同じ青森県内では、六ヶ所村の再処理工場の竣工目標が26年度と定められていますが、審査や工程が残されており年度内に間に合わない可能性があります。再処理工場で使用済み核燃料から取り出されたプルトニウムは、大間原発の全炉心で用いられるMOX(混合酸化物)燃料となります。両施設の完成目標の延期が、それぞれに与える影響をどうみていますか。
六ヶ所村の再処理工場で取り出したプルトニウムを燃料として加工し、大間原発でMOX燃料として使用します。日本の原子燃料サイクル政策は両施設が稼働して初めて成立するため、極めて密接に関連しています。
ただ、両施設の稼働時期が完全に一致する必要は必ずしもないと思っています。一定のタイムラグがあっても、それぞれが適切なタイミングで動き始めれば、日本のエネルギー政策や再処理政策において基本的に問題はないと思います。
――30年度の運転開始が遅れることによる財務的な影響に対し、長期脱炭素電源オークションの落札はどこまで好影響を与えるのでしょうか。
長期脱炭素電源オークションは、全国の電力小売り事業者が新たな脱炭素電源の固定費回収を担保し、容量拠出金で支援する制度です。これにより大間原発の投資回収の確実性が十分に高まったことは、極めて大きな一歩です。
ただ、運転開始が30年度から遅れるとなれば、大間原発からの収入を得るまでに時間を要し、その期間はJ-POWER全体のバランスシートを悪化させることになります。足元ではPBR(株価純資産倍率)が1.0倍を割り込んでいる状況ですので、財務体質やROE(自己資本利益率)のさらなる悪化を防ぐためにも、大間原発以外の事業で良質な投資を行い、早期にリターンを回収しなければなりません。
そのためには、GX推進機構(脱炭素成長型経済構造移行推進機構)による債務保証や公的金融機関の融資など、脱炭素電源に対するファイナンス支援制度の活用が不可欠だと考えています。
――ホルムズ海峡の封鎖で電力販売価格が上昇したことで、貴社の27年3月期決算は前年比16.7%増となる見通しの一方で、現場では石炭火力発電の助燃材となる油の調達難も発生していました。ホルムズ海峡封鎖による具体的な影響を教えてください。
最大の経営課題と位置付ける大間原発の運転開始が遅れながらも少しずつ前進する中、ホルムズ海峡封鎖が新たな余波を生んでいる。中東情勢の不安定化が突き付けたエネルギー戦略の再構築と、再生可能エネルギー事業の現在地を次ページで詳しく語ってもらった。







