「子どもにもっと勉強してほしい」「子どもがスマホばっかり見て困る!」と悩んでいる人も多いのではないだろうか。そんな人におすすめなのが書籍『私たちはなぜ「やるべきこと」をやれないのか、「やめたいこと」をやめられないのか』(キム・ソクチェ著/岡崎暢子訳)だ。本書は、神経内科専門医として脳科学分野の第一線で活躍する著者が、「感情や欲望に振り回されずに生きる方法」を、脳科学・心理学・哲学の視点から解説。子育てに関する章では、親の理想を押しつけすぎずに、子どもの潜在能力を伸ばす方法を紹介している。本記事では本書の発売を記念して、その内容を一部抜粋・再編集して紹介する。
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「子どものため」という錯覚、自分のための教育
「全部あなたのためにやってることよ」
世界中の親が口にしていそうなこの言葉は、子どもの将来を思う気持ちから出る一方で、親自身の不満や欲望を映し出す鏡でもありますね。
子どもの成績や進路はしばしば親のプライドと直結し、成功すれば親は自分のことのように喜び、失敗すれば同じように落ち込みます。
こうして親のアイデンティティーが子どもの成果と一体化してしまうと、教育はもはや「子どものため」ではなく「親の自慢プロジェクト」へと変質してしまうのです。
「親の期待」を押しつけられて育った子どもはどうなる?
心理学ではこうした現象を「代理達成」(vicarious achievement)といいます。
親は自分の欲望や過去に成し遂げられなかった夢を子どもに投影し、代わりに達成してくれることを期待するのです。
とくに韓国のように、子どもの学歴がそのまま親の社会的評価につながる社会では、この現象が顕著に表れます。
親の期待を押しつけられて育った子どもは「がんばらないと愛されない」と思い込み、親の顔色をうかがい続けます。そして、「本当はこれが好きだけど、ママが嫌がるなら……」と迷ううちに、自分の望みすらわからなくなるのです。
親から成果中心のフィードバックを繰り替えされた子どもは、「挑戦」よりも「安全」を選ぶようになる
「マインドセット」(心のあり方)の重要性を説いたキャロル・ドゥエックの研究によれば、親から「できた・できない」という成果中心のフィードバックを繰り返された子どもは、失敗を恐れ、新たな挑戦より安全な道を選択するようになるといいます。
こうしたマインドセットが根づくと、失敗が「自分は価値のない人間だ」という証拠にすり替わってしまうためです。
だからこそ、親が「全部あなたのためにやっていることよ」と言うとき、その“あなた”が自分自身になっていないかを振り返る必要があります。
子どもの自己肯定感を育てる「ひとこと」とは?
「親の欲望やプライド、不満を投影してはいないか?」
「子どもの好きなことを尊重し、失敗も受けとめる余裕を持てているか?」
こうした問いが、本当の「子どものため」の教育の始まりです。
今日からでも、ぜひ、子どもが好きな活動を一緒に行い、彼らの興味のあることや本音に耳を傾けてください。
そして「あなたがどんな大人になるのか楽しみだ」と伝えてください。
そのひとことが、子どもの自己肯定感を育て、健やかなマインドセットを形づくる種になります。
(本稿は『私たちはなぜ「やるべきこと」をやれないのか、「やめたいこと」をやめられないのか』から一部抜粋・再編集した記事です)









