単に就業規則違反があるだけ等では有効に解雇できないのです。
労働者が路頭に迷わないために
日本の解雇は厳しく制限されている
解雇がこれほど厳しく制限されている理由は実はあまり明確ではありません。解雇が厳しく制限されていることについての労働法学者の理由付けも色々あるのですが、大きくは2つです。
1つ目の理由は、経済的耐久力のない労働者へ与える打撃が大きいことです。要するに解雇されたら労働者は路頭に迷うということですね。
もう1つの理由は、昭和30年代以降の高度経済成長のなかで、正社員の長期雇用慣行を中心とする日本的雇用システムが徐々に定着・浸透し、キャリアの途中での解雇による打撃がより大きなものとなってきた、ということです。これは要するに、日本的な長期雇用システムの下ではキャリアの途中で解雇されると転職が容易でないということです。
ただし、この2つ目の理由(長期雇用システムに基づく解雇制限)については、現在は昭和30年代以降の高度経済成長期から70年近く経過しており、時代背景が大きく異なります。長期雇用慣行は完全に消えたわけではありませんが、昭和の時代に比べるとかなり薄れてきています。高度経済成長期という数十年も前の話を未だに持ち出して解雇を厳しく制限するというのは説得力に欠けます。
結局、現代でも解雇を厳しく制限することの正当な理由付けは、経済的に耐久力のない労働者に与える打撃の大きさに尽きるのではないかと思います。
確かに、経済的に耐久力のない労働者を保護するという視点は理解できますが、日本には手厚い失業手当の制度があり、会社都合で退職すればすぐに失業手当が支給され、労働者に一定の生活保障があります。さらに、現在は空前の人手不足であり、今後もこの傾向は続くと予測されるため、社員側にとって職探しは以前よりもずっと容易になっています。
他方、会社側を見ると、物価高や人件費の上昇で中小企業の経営は以前にも増して苦しく、少ない利益の中でぎりぎりの経営を強いられていることも多いです。社長が会社から役員報酬をもらっていないとか、むしろ社長が自身の財産を会社の赤字の穴埋めに使っているという会社も珍しくありません。
このような厳しい経営環境の中で、問題社員であっても雇い続けなければならないという会社の負担は、経済的にも精神的にも非常に大きなものです。







