要するに、頭が重いのでバランスを崩しやすく、転倒や転落をしやすいのです。ただでさえそうですから、高所平気症という心理的な要因が加わると、余計に転落事故が起こりやすくなります。

致命傷を避けつつ
適度な痛みを体験

 こうした事故を防ぐには、環境を安全なものに改善していくだけでは不十分です。一方で、子ども自身の危険への対処能力を磨かないと減らすことはできません。その際に効果的なのは、小さな失敗を経験しながら学ぶことです。

 痛みがともなうと、学習効果が格段に上がります。「こんなことはもうこりごりだ」という経験を通じて、原因と結果だけでなく、回避方法も含めてその人の中に深く刻まれるからです。

 この適度な失敗の体験を「失敗ワクチン」と呼んでいます。そして、絶対に致命傷にならないもので、適度な痛みがある体験をする機会を意図してつくり、いかに染みこませるかが大事と提唱してきました。実際に失敗を経験することで、失敗へ抵抗する力をつくることができるからです。特定の病気に対抗する免疫力をつけるために、無毒化・弱毒化したウイルスや細菌をあえて体の中に入れるワクチンと同じ発想です。

 絶対に致命的な失敗にならないことと、実際にことが起こったときの対処方法を同時に伝授するとより効果が上がります。

危なくない遊具に
子どもは魅力を感じない

 危険学プロジェクト(編集部注/事故の防止を目標とし、社会・組織・人間の考え方まで分析する、筆者が立ち上げた調査研究機関)では、遊具メーカーの協力を得て「危なくない遊具づくり」に取り組んだことがありました。この活動からも多くの知見を得ることができました。

 そもそものきっかけは、大学の授業で学生たちに「危なくない遊具をつくる」という課題を出したことです。

 東大工学部の教授を退官後、工学院大学に移って「創造工学」という授業を受け持っていた頃のことです。当時はちょうど公園などに設置していた遊具で子どもがケガをする事故が相次いでいて、ちょっとした社会問題になっていました。

 解決策として、遊具そのものの撤去を選択するケースが多かったので、タイムリーなテーマを題材に、本当にそれでいいのか、あるいは別解がないのかを学生たちと一緒に考えることにしたのです。