わが子が伸びる中高一貫校&塾 2026年入試直前版#18写真提供:日能研

中学受験の大手四大塾の一つであり、中堅校を中心に高い合格実績を誇る日能研。特徴は「子どもの学びを真ん中に」という方針で、中学入学後の「後伸び」に定評がある。特集『わが子が伸びる中高一貫校&塾 2026年入試直前版』の#18では、茂呂真理子取締役副社長にライバル塾との違いや、近年の「パターン学習&圧倒的な物量」の学習スタイルに警鐘を鳴らす理由、高みを目指す子どもを選抜した「グランドマスタークラス」を新規開講する背景について聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 篭島裕亮)

パターン学習や演習量勝負ではなく
課題設定や問題解決力を育てて合格をつかむ

――首都圏で中学受験をする場合の塾選びにおいて、まずは四大塾(日能研、四谷大塚、SAPIX、早稲田アカデミー)を検討する家庭が多いと思います。日能研の特徴について教えてください。

 日能研は1953年の創業以来、中学受験専門の塾として成長してきました。中学受験塾なので合格をつくらないといけませんが、他塾と一番違うところは「合格して進学したその先の子どもの人生」までをも考えて、中学受験の学びをつくっている塾だということです。それは子どもたちの未来に対する責任だと思っています。

 具体的に言うと「課題設定・課題解決力を育てる」ことを重視しています。それに近いことは他塾も言い始めていると思いますが、日能研は広告のために言葉をつくったのではありません。

 子どもたちにどういう力を育ててほしいかについて、オリジナルのテキスト・授業を含めて具現化しています。そこが日能研のこだわりであり、特長です。

 中学受験で学ぶべき内容、問われる知識や技術はほぼ決まっており、どの塾もテキストで扱う項目は大きく変わりません。異なるのは、その知識や技術に対して「どうアプローチしていきますか?」「そのことによって、どんな力を育てていきますか?」ということです。

 中学受験の成功体験はその後の子どもの人生にすごく大きなものを残してくれます。でも、その成功体験が「パターン学習や暗記だけの学びでつくった成功体験でいいんですか?」ということを強調したいです。

 圧倒的な物量をこなして「パターン化」して解き方を学び、暗記もすごくたくさんした。それで自分の第1志望校の合格につながった。それも一つの成功体験だと思います。

 ただし、その体験は10年後、20年後の人生において、果たして「生き続けているのか」と問いたいです。社会に出て、誰かに対して貢献するということは、答えがない問いに向き合っていかなければならないということです。

 そんなとき、パターン化した方法で解決しようとしてもうまくいかず、「どうしたらいいんだ」と前に進めない大人になったら困りますよね。でも、パターン化による成功体験に頼っていると「これでうまくやってきたはずなのに」というデメリットをつくってしまうということがある。

 ですから、私たちは他塾にあるような「物量をこなすことで難関校に合格させる」ということは絶対にやりません。子どもが自分で学び進むということに徹底的にこだわっています。

 家庭学習のテキストには、「授業のふり返りなど子どもが自分で学び直す工夫」をしています。授業で学んだことをふり返り、気づきをもって次に生かしていくということを日能研ではずっと前からやっています。

 保護者にお膳立てされて「これをやりなさい」と指示されれば、合格をつかみやすいかもしれません。でも、保護者が手を離したら、子どもはどうやって自ら学び進むのでしょうか?自分で課題を見つけ、学び進むにはどうしたらいいのかという力が育って、初めて子ども自身の力で合格をつくったといえるはずです。

――日能研は中堅校を中心に幅広い偏差値帯に実績がありますが、御三家などを狙う家庭は最難関校に強いSAPIXが通塾先の第1候補になるケースが多いと思います。実際、保護者が日能研出身で楽しい思い出があるのに、わが子の塾にSAPIXなど難関校に強い塾を選んだケースもあります。

茂呂真理子・日能研取締役副社長もろ・まりこ/2001年3月聖心女子大学教育学科卒業。01年4月日能研入社。教室スタッフ、教室長を経て09年4月日能研本部勤務。企画、広報、営業部門の統括職を歴任。14年2月取締役、16年5月常務取締役、24年2月取締役副社長。現職。 写真提供:日能研

 塾を選ぶときには自分の目で見て、「子どもの性格に合う塾を選ぶ」ということが大事だと思います。世の中の風潮に流されて塾を選んだ結果、「子どもに申し訳ないことをしてしまった」とある時保護者の方が気づき、日能研に転塾してくる子がたくさんいます。

 その背景をよくよく聞いてみると、「子どもが不在」になっているということをとても感じます。子どもの成績が悪いのは親の責任と考えてしまうと、「どうやって子どもを管理していくか」という思考になりますよね。管理すれば成績が上がって、上位クラスについていけるかもしれない。

 でも、それが過激になればなるほど「子どもが不在」になりがちです。私たちの根っこにあるのは「子どもの学びを真ん中に」という考え方です。

――背伸びして難関校を目指すことを推奨しないということですか?

 そうではありません。現時点では成績が届いていなくても、私たちは「この難関校に行こうよ」と言うことがあります。なぜなら、その子の思考の特性、考え方、どういうところにつまずきがあるかなど、全てを見極めて受験相談をしますし、子どもを見ているからこそ対話を深められるのです。

 模試の結果も大事ですが、模試の偏差値だけでは見えてこない子どもの学力を見て、志望校をお勧めします。偏差値的には届いていない子が、難関校に合格する例はたくさんあり、届いていない子を合格させるという力について日能研は長けていると思います。

――日能研には日能研本部と日能研関東が運営する教室があります。関東系教室には、すでに一部の教室(「池袋校」「大宮校」「自由が丘校」「たまプラーザ校」「三田校」「南浦和校」「武蔵小杉校」)に選抜クラス(TMクラス)がありますが、2026年度からは本部系教室でも、選抜クラス(グランドマスタークラス)を「おおたかの森校」「お茶の水校」「横浜校」に設置すると聞きました。最難関校志望者の家庭にも積極的にアピールしていくということでしょうか。