「これまでのキャリアやスキルが活かせるから」は、60代前半では働く理由の2位、60代後半でも「健康を維持できるから」に次ぐ3位です。しかし、60代社員が、実際にキャリアやスキルを活かして活躍できるかというと、必ずしも楽観できません。60歳になると59歳の時よりも役割・責任を軽くする企業が約4割です。誕生日を境に能力が落ちるわけではないので、これは個々人の能力に応じた仕事のアサインではなく、企業としての決め事です。

 60代社員を「半・現役」扱いすることにしている企業が約4割あるということなのです。そのような企業では、60歳を超えた時点ですでに「もったいない」状態に置かれています。また企業によっては、50代後半で同様の扱いになる企業が約1割あります。もったいなさすぎます。

個人の強みを消す必要はないが
活躍できる場面は限られる

 とはいえ、継続雇用の場合は、60歳になった時にこれまでとまったく異なる職務に就く人は約1割であり、ほとんどの人は役割・責任が軽減されるとしても、これまでと関連性がある職務に就いています。自分の能力・経験を活かす余地があります。企業としても、「わざわざその人の強みを消す必要はない」ので、基本的には過去に経験している職種を軸に配置を検討するわけです。

 しかし、60代後半になると状況が異なります。企業の継続雇用義務がなくなり、長年勤めた職場を離れざるを得ない人が出てきます。およそ半数の企業において、定年後再雇用の上限年齢は65歳です。60代後半で、これまでのキャリア・スキルを活かせる転職先を見つけることは至難の業です。以降はパート・アルバイトとして「経験不問」の職務に就く可能性が高くなります。

 筆者は、基本的には「キャリアやスキルを活かして働くこと」はよいことだと考えています。そのほうが、仕事の質を高めて効果的・効率的に働くことができ、収入面でも有利だからです。念のため補足しておくと、パート・アルバイトを否定しているわけではありません。継続勤務のほうが、キャリアやスキルを活かした職務に就きやすいと考えているだけです。