公共交通への転換で
起きる日本の大問題
しかし、公共交通への転換が期待通りに果たされたとしても、それはそれで大問題となる。2020年国勢調査から県庁所在地の通勤・通学における交通分担率を見ると、首都圏は東京23区が鉄道64%、自家用車6%、横浜市が鉄道60%、自家用車15%、さいたま市が鉄道51%、自家用車22%、千葉市が鉄道42%、自家用車38%だ。
ところが、首都圏を出ると様相は異なる。一定の公共交通ネットワークがある北関東であっても、前橋市が鉄道6%、自家用車76%、宇都宮市が鉄道6%、自家用車69%、水戸市が鉄道7%、自家用車70%と圧倒的だ。東日本(北関東・東北・甲信越)は仙台市(鉄道25%、自家用車44%)以外、いずれも同程度の水準だ。
自家用車から公共交通への転換とは、公共交通機関が全てないし半分を担うという大層なものではない。最大でも数%を受け持つにすぎないが、現実の公共交通ネットワークは、そのわずかな旅客を引き受けられないほど貧弱だ。増発、増車しようにも車両や乗務員はすぐに手配できるものではない。
今回の「危機」はこのまま収束するのかもしれないが、同様の事態が生じるリスクは変わらない。エネルギー危機に際して公共交通機関に何かしらの役割を期待するのであれば、それは平時から段階的に準備しておかなければ実行できない。
ガソリン・軽油価格の急騰による影響は既に日本でも出ている。自治体が運行する市バス、都バスなどの燃料調達では、予定価格と大きく乖離したことで入札が不成立となった。石油販売会社が大口向けの販売制限を行ったことで、燃料調達に支障が出ている事例があるという。
4月7日の日本経済新聞によれば、川崎市のバス燃料(軽油)調達価格は3月分と4月以降で2倍となっている。福田紀彦市長は7日の記者会見で「燃料だけが運賃改定のポイントではない」として、燃料費高騰はすぐに運賃値上げに結びつかないとの認識を示したが、いつまで持ちこたえられるか。
このまま戦争が収束しても、原油供給体制はすぐに正常化しない。燃料費が高止まりのまま推移すれば、路線バス事業の、ただでさえ苦しい経営がさらに悪化する。中長期的に路線の廃止や廃業につながる可能性は否定できない。そしてそれは化石燃料に依存した自家用車中心の社会を一層強化することになる。公共交通の在り方は、エネルギー安全保障に直結する問題なのである。







