Photo:Sipa USA/JIJI
円安や原油高が進むと、日本は海外からモノを買うために、これまで以上の対価を支払わなければならなくなります。一方で、輸出で得られる収入が同じように増えなければ、国内で使える所得は圧迫されます。こうした変化を捉えるのが「交易条件」です。連載『ビジネスパーソンに必須!経済&ビジネスの最重要キーワード』の今回のキーワードは交易条件。われわれの生活の豊かさの尺度としての意味、その長期的な変化の背景を読み解きます。(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)
原油高で悪化する交易条件
われわれの生活の豊かさの尺度の一つ
今回のキーワードは「交易条件」です。
多くの人にとって聞き慣れない言葉かもしれません。しかし、原油価格が高騰し、石油に関わる商品の輸入価格が上がっている足元の状況を理解する上で、とても重要な言葉です。
交易条件は、輸出物価指数を輸入物価指数で割って求めます。いずれも日本銀行が毎月公表している指数です。指数には円建てベースと契約通貨ベースがありますが、通常円建てベースを使います。輸出物価の上昇率が輸入物価の上昇率を上回れば交易条件は改善し、逆に輸入物価の上昇率が輸出物価の上昇率を上回れば悪化します。
原油価格が高騰すると、原油のほぼ全量を輸入に頼る日本では、まず輸入物価が押し上げられます。いずれ輸出製品の価格引き上げにつながる可能性はありますが、契約や国際競争の制約があるため、すぐに反映されるとは限りません。そのため、当初は輸入物価の上昇率が輸出物価の上昇率を上回り、交易条件は悪化しやすくなります。
話を単純にするために、原油1キログラムを1000円で輸入し、自動車1台を1000円で輸出する国を考えます。ここで原油価格が2倍の2000円に上昇したとします。自動車の輸出価格も同時に2倍の2000円になれば、同じ数量の輸出で同じ数量の輸入を賄えるため、交易条件は変わりません。
しかし、自動車の輸出価格が1000円のままだとすると、同じだけ輸出しても以前ほど多くの原油を買えなくなります。これは、同じ量の輸入品を確保するために、より多くの支払いが必要になる状態、すなわち交易条件が悪化している状態です。この結果として生じる実質所得の目減り分が、交易損失です。
現在の原油高の局面は、まさにそうした交易損失が発生しやすい状況です。日本国内の生産や輸出の数量が変わらなくても、資源輸入のためにより多くの対価を支払わなければならなくなります。その分、国内で使える実質所得は圧迫されます。
このように、交易条件の悪化とは、輸入資源の値上がりによって、同じ輸出をしても以前ほど輸入できなくなり、日本全体の実質所得が削られる現象にほかなりません。その削られた実質所得が、交易損失として表れます。その分、われわれの生活が貧しくなっているともいえます。
上記の例とは逆に、原油の輸入価格が下落し、自動車の輸出価格が変わらなければ、交易条件は改善します。そして、輸入価格の下落によって海外への支払いが減る分、国内で使える実質所得は増えます。この増えた分が、交易利得です。
次ページでは、原油高以外の交易条件の変動要因を取り上げるとともに、これまでの交易条件や交易利得・交易損失の動きを振り返りながら、その背景を検証します。







