逆張りは「余裕」があってこそ成り立つ
結果として、3社の逆張り戦略はいずれも失敗に終わった。共通して見られる要因は、(1)想定ほど売り上げが伸びなかったこと、(2)コスト負担が重く、不採算店舗(拠点)が増加したこと、(3)コロナ禍以前から資金繰りに十分な余裕がなかったこと、の3点である。
業績・財務が安定している企業にとっての逆張り戦略は、中長期的な成長を狙ううえで有効な手法となり得る。仮に戦略が外れても、既存事業の収益力でカバーでき、潤沢な資金があれば倒産にまで至る可能性は低い。
しかし、3社はいずれもそのような状態にはなかった。ネクサス社はスタートアップ企業で財務基盤が不安定であり、後に粉飾決算の発覚もあった。マツオ社は主要顧客がシニア層で、既存店の売り上げ成長が期待しにくく、採算性も低い中で金融債務が重い状態にあった。ジュピター社も、小売業でありながら現預金の月商比率が0.5カ月分に満たず、手元流動性が低い状況だったといえる。
3社とも、逆張り戦略を取るには心許ない資金状態であり、脆弱(ぜいじゃく)な財務基盤や不安定な業績の下での出店拡大は大きなリスクを伴った。
成功例との決定的な違い
どの時代にも逆張り戦略に挑む企業は存在し、中には大きな成功を収める例もある。コロナ禍で急速に店舗数を伸ばした一人焼き肉チェーンや、女性層を狙った作業服のセカンドラインなどは、その成功例と言えるだろう。
これらは、焼き肉=個食、作業服=若年層女性というように、従来とは異なる顧客層を開拓し、新しい市場を創出した点が大きい。単に空きテナントを活用しただけでなく、新たなビジネスモデルを構築し、一気に浸透させたことが、今回の3社との決定的な違いだった。
一方で、3社同様にコロナ禍での出店攻勢によるリスクを抱えている企業は存在する。今後、そうした企業の中から新たに破綻に追い込まれるケースが出てくる可能性も否定できない。







