中東情勢は一因ではあるが
それだけでは説明できない

 要因は、いくつか挙げられている。

 第一に、イラン問題による金融市場の不安定化だ。

「株価変動の拡大は、IPO株に負の影響を与えます。公開価格の決定から上場までにタイムラグがあるため、その間に市場全体が下落すると、“公開価格が割高”とみなされがちです」(小林さん、以下同)

 ただ、これが生じたのは3月以降であり、2月については説明がつかない。

 第二に、IPO株に多い成長株にとって逆風とされる、金利上昇の影響。だが小林さんはこれも主因ではないとする。

「金利が上昇すると、高PERの銘柄で割高感が意識されやすくなるのですが、2026年ここまでのIPO株のPERはさほど高くありません」

 第三に、公開規模の問題だ。一般にIPO株の初値は、公開規模(公開株数×公開価格)が小さいほど、上がりやすいとされる。規模が大きいと、公開株を手にした投資家の中で、初値で売る“換金売り”も増えるためだ。2月上場の3銘柄は公開規模が約40億円~140億円とやや大きめで、これが一因とも考えられた。

 しかし3月は、ベーシックやヒトトヒトホールディングスのような小型IPOに類する銘柄も公開価格割れとなっている。

「10億円台後半程度の規模もこなせないとなると、IPO株全般に対する買い意欲自体が低下しているといわざるを得ません」

上場維持基準の厳格化で
小型株への警戒感が浮上

 第四の要因として、小林さんはむしろ「小型株が投資家に敬遠されている」と指摘する。背景には、東証の市場改革がある。

 東証は2022年に上場維持基準を厳格化し、プライム市場では流通時価総額100億円以上、スタンダード市場では同10億円以上などの条件が課せられた。2026年3月末から経過措置と改善期間が順次終了。4月1日時点で基準を達成できなかった26社が監理銘柄行きになった。これらは早ければ10月に上場廃止の可能性もあり、株価が急落する銘柄も散見された。

 グロース市場の上場維持基準については2025年9月、時価総額が「上場10年経過後に40億円以上」から、「5年経過後に100億円以上」へと厳格化されている(2030年3月より適用)。

「IPO株でも、基準未達リスクのある小型株への警戒感が、買いを手控えさせている可能性があります」

 そして第五に小林さんが大きな要因として挙げるのが、「大型株への資金シフト」だ。2025年は大型株で、キオクシアホールディングス、フジクラ、イオン、NEC、アドバンテストなど、株価が2倍超となる銘柄が続出した。大型株で稼げるなら、“わざわざリスクの高いIPO株を買わなくてもいい”と考える投資家が増えても不思議ではない。

「特に海外投資家の資金が、流動性が高い大型株に流入しています。それで大型株の株価が上がり、個人投資家も追随するという状況です」

 実際に最近、初値も初値後の株価も好調なIPO株は、大型銘柄のほうが目立っている。

「一定の規模がないと機関投資家が買わない、という理由もあります。時価総額300億円程度が1つの目安です」

“当たれば儲かる”は過去の話
投資家は意識を切り替えるべき

 “7連敗”は、これら五つの要因が複合した結果と考えるのが妥当だろう。だが、特に注目すべきは第四・第五の要因だ。IPO市場の根本的な変化の表れであり、今後も続く可能性が高い。

 個人投資家は、意識を切り替えなければならない。“抽選に当たりさえすれば儲けられる”という考え方はもはや通用しない。

「初値が伸びづらくなったのは否定できない事実」

 実はこの異変は今に始まったことではなく、小林さんは2年ほど前から指摘している。今回は、それが顕著に表れたということだ。

 小型IPOの初値は上がりやすい、という傾向が完全に消えたわけではない。今後も高騰する銘柄は出てくるだろう。4月9日に上場したソフトテックスの初値は、公開価格比プラス65%と好調だった。しかし、“初値の後”も要注意だ。上場後の株価推移も芳しくない銘柄が多く、特に小型IPOで初値が高騰した場合は、反落するケースが目立つ。飛びつくと痛い目に遭いかねない。

 公開株を買って初値売り狙いでも、上場後に買うセカンダリー投資でも、銘柄の選別がこれまで以上に求められる。業績面の実績はどうか、今後の成長期待は持てるか、そして株価の水準が高すぎないか、見極める必要がある。IPO株でもいまいちど、投資の基本に立ち返ることが重要だ。

本記事は2026年4月15日時点で知りうる情報を元に作成しております。本記事、本記事に登場する情報元を利用してのいかなる損害等について出版社、取材・制作協力者は一切の責任を負いません。投資は自己責任において行ってください。