日本は「厳しい同化社会」なのか

 外国人に対して日本社会がどれくらい「同化」を求めるのか。これも評価が分かれる論点だ。

 Yishiさんは、日本は移民国家ではないものの、「完全に日本人のようになること」を求められているとは感じていないという。ルールを守り、礼儀正しく暮らしていれば、外国人も十分に受け入れられるというのが彼の実感だ。

 彼は日本語がほとんど話せない状態で急病になり、救急で病院にかかったことがあるという。その際も翻訳サービスを使いながら丁寧に対応してもらい、入院や治療もスムーズだった。健康保険のおかげで費用負担も大きくはなかった。

「外国人だから排除されたと感じたことはありません。むしろ淡々と、公平に扱われている印象です」

 さらに、日本には他の移民国家で見られるような深刻な人種対立や社会の分断が比較的少ない。そのことも日常の安心につながっていると語る。

子育て世帯にとっての教育の安心感

 Yishiさんが特に高く評価していたのは、子育ての環境だった。

 日本の教育は画一的だと批判されることもあるが、幼児教育の段階では学力偏重ではなく、生活習慣や他者との協調を重視している。子どもが自分で食事をし、服を着て、礼儀正しく振る舞うことを、日常のなかで自然に身につけていく。過度な競争に追い立てられにくい点も、親としては安心材料だという。

 また、日本の基礎教育は安定しており、私立校や国際学校など選択肢もある。同じ系列の国際学校でも、中国の北京や上海と比べて学費が安いケースがあることも魅力に映った。

 老沙さんは、「子どもを同質性の強い社会で育てたくない」と語っていた。だがYishiさんは、その同じ社会に「過度な競争から子どもを守る安定」を見ている。

圧倒的な価値としての「安全」

 日本に住みたい最大の理由は何か。Yishiさんは迷わず「安全」と答える。

 小さな子どもが近所の公園で遊べる。女性が夜に一人で帰宅しても、大きな不安を抱かずに済む。自転車のかごに荷物を置いていても盗まれにくい。こうした日常の安全は、監視カメラの多さや警察の存在感だけで生まれるものではなく、社会全体に共有された規範意識によって支えられていると感じるという。

 特に子育て世帯にとって、この「日常の安心」は何ものにも代えがたい価値だ。経済成長率やGDPの順位では測れない、日本の強みがそこにある。

税金は高いが、見返りが分かりやすい

 税負担についても、Yishiさんは比較的前向きに受け止めている。Yishiさんは昨年、税金として476万円を納めている高額納税者だ。

 日本では税金が高いのは事実だが、その分、医療、教育、インフラといった公共サービスの水準が高い。たとえば出産育児一時金が支給されるし、子どもは中学校を卒業するまで医療費もほとんどかからない。公立の小中学校は無償で、高校や大学には各種の奨学金制度がある。幼保無償化によって、3歳から5歳の幼稚園・保育園の負担も抑えられている。

 電車は時刻通りに走り、道路は整備され、水道水はそのまま飲める。ごみの分別も徹底されており、厳しい分、街は清潔に保たれている。Yishiさんにとって、日本は「支払った税金が、生活の安心として目に見えるかたちで返ってくる国」だった。