同じ日本を見ても、評価が分かれる理由

 興味深いのは、日本に対して真逆の評価を示した老沙さんとYishiさんが、実は友人同士だという点だ。

 同じ中国出身者で、同じ日本社会を見ていながら、一方は「自由が少なく息苦しい」と感じ、もう一方は「秩序があり安心できる」と感じる。見ている現実が違うというより、重視する価値観が違うのである。

 自由度の高さを重視する人にとって、日本の細かなルールや同調圧力は窮屈に映る。だが、安定、安全、予測可能性を重んじる人にとっては、その同じ特徴が魅力になる。秩序、安全、清潔さ、公共サービスの安定は際立っている。

 さらにいえば、同じ中国人でも独身の働き手と、子育て世帯でも見え方は違うだろうし、富裕層か中間層か、起業しているか会社勤めなのかといった立場の違いによっても、税や制度の感じ方は異なるだろう。

 つまり、日本は「良い国」でも「悪い国」でもない。その人が何を求めるかによって、合うか合わないかが変わってくるのだ。

外国人政策の厳格化が映し出すもの

 こうした中、日本政府は昨年秋ごろから外国人政策を相次いで厳格化している。

 外国人起業家向けの「経営・管理ビザ」取得要件の見直しでは、必要資本金の額を従来の500万円から3000万円へ引き上げる案が示され、複数の要件も厳格化された。在留資格の更新・変更や永住許可に関する手数料も大幅に引き上げられた。

 さらに3月27日、法務省は4月1日から、日本国籍取得のための「帰化」について、居住要件を現行の「5年以上」から「原則10年以上」に引き上げるなど、審査を厳格化する方針を示した。税や社会保険料の滞納の有無を確認する対象期間も長くするという。

 これらの制度見直しの背景には、一部の外国人による制度悪用を防ぐ狙いがあるとされる。だが、日本社会で排外的な声が強まりつつある今こそ、単に「外国人の問題」として片づけるのではなく、外国人の目に日本がどう映っているのかに耳を傾ける必要があるのではないか。

「自分に合う場所」を選ぶ時代

 Yishiさんは投稿の最後で、こう書いている。

「日本は決して完璧な国ではありません。言語の壁や自然災害、細かいルールの多さなど、不便に感じる点もあります。しかし、私たちのように『安定した日常』を大切にする家族にとって、日本は理想に近い環境です。この世界に完璧な国はなく、あるのは『自分に合う場所』だけです」

 その言葉は、前編で老沙さんが語った内容と、どこか重なっている。

 国境を越えて暮らし方を選べる時代において、大切なのは「どの国が優れているか」よりも、「どこが自分に合っているのか」なのだろう。日本を離れる中国人もいれば、日本に住みたい中国人もいる。その両方が増えていることこそ、今の日本の姿をいちばんよく表しているのかもしれない。

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