2023年にGX推進法が成立して以後、GX(グリーン・トランスフォーメーション)をめぐる環境整備が急ピッチで進んでいる。一方、世界各地で資源争奪戦が激化する中、企業のサステナビリティ戦略は「環境対策」としてよりも、むしろ「資源対策/成長戦略」としてとらえるべき時代になった。GX時代の本格到来に向け、いかに価値創造ストーリーを再設計すべきか。こうした問題意識の上に立って、ダイヤモンドクォータリーは2026年3月18日、都内で「ダイヤモンドクォータリー創刊9周年記念イベント」を開催した(主催:ダイヤモンド社 メディア局、協賛:アビームコンサルティング、アーサー・ディ・リトル・ジャパン、アスエネ)。
産学連携推進機構理事長の妹尾堅一郎氏が登壇した基調講演では、循環経済への移行期(バトンゾーン)において企業が検討すべき諸問題を提起。クロストークセッションでは、その議論が深掘りされた。本稿ではその模様をレポートしつつ、いま日本企業に求められている「視座」を提示する。
サステナビリティ対応の持続可能性が問われる要因
いま、日本企業に「サステナビリティ疲れ」とも呼ぶべき停滞感が漂い始めている。議論はすれ違い、サステナビリティ対応はうまくいかず、循環経済に向けた事業構想も描き切れない。皮肉にも、サステナビリティ対応の持続可能性が問われている状況だ。
いったい何が持続性や継続性への対応を難しくしているのか。その要因として、妹尾堅一郎氏はGXが適切に理解されていない現状を鋭く指摘する。
「GXはもともと『サステナビリティ・トランスフォーメーション』と言われていました。サステナビリティは3段階に分かれます。1つ目は地球環境の持続可能性、2つ目は経済社会の持続可能性、そして3つ目は企業や事業の持続可能性です。ところが、これら3つの関係を明らかにして事業計画を説明している企業は非常に少ない。人類の生存と豊かな社会の存続のために、企業としてどのような価値を提供していくのか。この点を踏まえなければ、サステナビリティの議論が隘路に入り込んでしまうのです」
産学連携推進機構 理事長妹尾堅一郎氏
慶應義塾大学経済学部卒業後、富士写真フイルム(現富士フイルムホールディングス)勤務を経て、英国国立ランカスター大学経営大学院博士課程満期退学。産業能率大学助教授、慶應義塾大学大学院教授、東京大学先端科学技術研究センター特任教授、一橋大学大学院MBA 客員教授のほか、青山学院大学大学院、九州大学や長野県農業大学校等、多くの大学・大学院で客員教授を歴任。現在も東京大学で大学院生や社会人を指導。また企業研修やコンサルテーションを通じて、イノベーションやビジネスモデル、新規事業開発等の指導を行っている。日本生産性本部で「循環経済生産性ビジネス研究会」座長。そのほか省庁や公的機関の委員、複数の企業で社外取締役を兼務。著訳書は『技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか』(ダイヤモンド社、2009年)、『社会と知的財産』(放送大学教育振興会、2008年)、『プラットフォーム・レボリューション』(監訳、ダイヤモンド社、2018年)、など多数。
1950年に25億人だった世界の人口は現在83億人にまで急増し、2050年には100億人を突破すると見られている。いまでさえ、年間で地球1.6個分以上の生物資源を消費しており、ウクライナ危機を契機として資源争奪戦が顕在化した。そして、アメリカ・イスラエルのイラン攻撃でエネルギーをめぐる安全保障の懸念は深まるばかりだ。
こうした中、豊かな経済社会を継続・強化するには、廃棄物処理といった環境問題への対応だけでは十分ではない。妹尾氏はビジネスの観点からサステナビリティを再定義するために「3つの重点課題」を挙げ、その本質を解き明かした。
「1つ目が気候変動抑制。脱炭素(カーボンニュートラル)をはじめとする温暖化ガス対策です。2つ目が循環経済(サーキュラーエコノミー)への転換。線形経済(リニアエコノミー)の下、内部利益を優先して環境負荷を外部化するやり方は、すでに限界に達しています。しかも、いわゆる『雑プラ(リサイクルしにくい雑多なプラスティック)問題』を典型的に生み出しています。そして3つ目が生物資源の活用(ネイチャーポジティブ:と生物多様性の回復)です。そのすべてに通底するのは『資源の調達と活用』ということであり、これを起点にして、今後のビジネスを構想・創造していく必要があるのです」







