循環経済への逆風の中で日本企業が取るべき道は
では、バトンゾーンでビジネスを行う際に検討すべき課題は何か。
一つは、ビジネスの種類だ。線形経済型のビジネスを継続すれば、レッドオーシャンでの消耗戦を余儀なくされる。他方で、循環経済型のビジネスであれば、未開拓のブルーオーシャンに漕ぎ出すことができる。ヨーロッパではこの市場への進出が順次始まっており、日本企業の中にもこの未到の領域に挑んで急成長している会社があるという。
「まだ十分に間に合います。にもかかわらず、いまなお線形経済の中で新規事業を立ち上げている企業がいかに多いことか。循環経済型のビジネスを一から始めるのが難しいのであれば、レッドとブルーが混ざり合う“バイオレットオーシャン”を狙ってみてはどうでしょうか。つまり、既存市場で培った資産や技術を循環経済型に適応させるのです。これは言わば『BCP(事業継続計画)の循環経済版』といえます」
これまで循環経済の議論では、資源の採掘や製造を担う「動脈産業」と、廃棄物の回収や処理を担う「静脈産業」という分類がなされてきた。妹尾氏はそこに、両者をつなぐ「中脈サービス産業」という概念を加え、この新たな産業が循環経済を牽引していくと説く。
「ユースの延伸やリユースの繰り返しといった『使い続け』は静脈と動脈の間に位置する“中脈”であり、資源の利用効率性を大きく高めます。たとえば、地域に根差した衣食住の修理・修復サービス、あるいはリースというビジネスモデルは今後、大きく成長していくことでしょう。また、これまで『リサイクル産業』と呼ばれてきたビジネスを、廃棄物を再資源化する『リソーシング産業』と再定義できれば、ビジネスの風景は一変します」
言うは易しーー。そうした懐疑的な見方もあるかもしれない。だが、こうした認識の転換がけっして理想論ではないことを、妹尾氏は生物生態系の視点から解き明かす。
「生物生態系において、易分解性有機物(利用しやすい資源)が豊富な環境では、資源獲得効率の高い生物種が優占します。経済の文脈に読み替えれば、資源大国や資源大国と貿易できる国や企業は資源獲得効率が高く、繁栄しやすいということです。戦後、輸入と加工貿易で発展した日本がまさにそうでした。
しかし、易分解性有機物が消滅して難分解性有機物(利用しにくい資源)が大半となる世界では、資源利用効率が高い生物種が優占する生態系に変わっていきます。これは、再生材やゴミ化したものを活用できる企業や事業が勢力を増し、産業生態系における優位なポジションへ移行する、と読み替えることができます。その意味するところは、資源利用効率型企業として循環経済型のビジネスを展開するのは戦略的に正しい、ということです」
アメリカが環境対策から次々と撤退している現在、循環経済への移行には逆風が吹いているようにも見える。そんないまこそ、アメリカから主導権を奪い返すチャンスであるとして、ヨーロッパや中国は虎視眈々と時機をうかがっている。
アメリカに追従し、従来通りの線形経済型ビジネスで消耗戦を続けるのか。それともヨーロッパや中国同様、好機を求めて循環経済型ビジネスというブルーオーシャンへと漕ぎ出すのか。「日本企業の姿勢が問われているように感じます」と妹尾氏は述べ、基調講演を締めくくった。







