「見方の転換」をGXの基本姿勢にすべき

 「日本流GXの勝ち筋はどこにあるか」をテーマにしたクロストークセッションでは、協賛講演で登壇したアビームコンサルティング サプライチェーン・サステナビリティ戦略ユニット プリンシパルの豊嶋修平氏、アーサー・ディ・リトル・ジャパン エネルギー・ユーティリティ・プラクティス プリンシパルの宇野暁紀氏、アスエネヴェリタス 取締役CCOの小池心平氏の3人と妹尾氏が議論を展開した。

 最初の問いは「日本におけるバトンゾーン施策の現状について」。基調講演で妹尾氏が指摘した「ブリコラージュ的対応とエンジニアリング的対応の並走」というポイントを踏まえ、意見が交わされた。線形経済の論理が支配的な現在の状況下で、いかにエンジニアリング的対応を実践するかが焦点となるとして、妹尾氏は「非常階段論」というアプローチを紹介した。

「サステナビリティ疲れ」をどう克服するか見方の転換でGXの勝ち筋を探る
「サステナビリティ疲れ」をどう克服するか見方の転換でGXの勝ち筋を探る

 「いきなり『本階段』をつくり変えようとすれば当然、反発を招きます。そこで、まず万一の備えとして『非常階段』をつくる。その効果が理解されれば、本階段にも同じ仕組みを取り込もうという話になるはずです。つまり、すべてを循環経済型に変えようとしても無理筋なので、特定の事業について非常階段的な、出島的な扱いで、まずは取り組んでみるというのが一つの方法でしょう」

 2つ目の問いは「日本企業の特徴を活かす技術やビジネスモデルはどんなものか」。こうしたテーマでは「日本企業の強みは何か」という議論になりがちだが、妹尾氏は「『強み』は禁句」だと断じる。

 「パラダイムが変わろうとしている時に、なぜ『強み』と言えるのか。『強み』や『弱み』はコンテクストに依存します。線形経済での『強み』が循環経済でも『強み』であり続ける保証はありません。それはあくまで『特徴』であり、それをどう活かすかを考えることを『戦略』というのです」

 何を「価値」や「資源」と見なし、どう意味付けるかによって、既存の技術やビジネスモデルは「強み」に変わるのではないか。さらには「日本=資源を持たざる国」という発想から脱却できるのではないか。そんな議論が展開された後、カーボンニュートラルの達成期限とされる2050年に向けて、妹尾氏は「技術開発と知財整備、ビジネスモデルや制度の社会実装にかかる時間を考えれば、いま始めなければ間に合わない」と警鐘を鳴らした。

 「とはいえ、周囲の理解を得られず、苦労されている方も多いでしょう。しかし、最初から全社員の賛同を得ようとする必要はありません。イノベーションの世界では、新規性や先進性を好む少数層を取り込んだ先に待ち構える『キャズム』(深い溝)を越えることさえできれば、マジョリティ層に一気に普及するとされています。それには、市場の2割を押さえさえすればよろしい。iPhoneやグーグルがまさにそうでした。この経験に基づくモデルは循環経済へ向けた企業変革にも当てはまります。2割を味方につけることができれば、社内の機運は大きく高まり、思考も変わっていくはずです」

 基調講演とクロストークセッションを通じて妹尾氏が繰り返し説いたのは、さまざまな「見方や考え方の転換」である。これをGXの基本姿勢とすることで、サステナビリティ対応は「攻めの戦略」に、さらには「稼ぐ力の再創造」へと昇華させることができる。

 

 

◉構成・まとめ|金田修宏 ◉撮影|佐藤元一