つまり、貯金や節約を成功させるには、支出を「心の中で何度もリハーサル」する習慣が大切。実践のコツは、リハーサルを「短く」「すぐ」「毎回」行うことです。長い家計簿を作ろうとすると挫折しやすいので、「買い物直後に合計金額だけスマホのメモに入れる」「レシートの合計に丸をつける」といった軽い手順で十分です。

 特にキャッシュレスは支払いが一瞬で終わり、意識に残りにくい分だけ、意図的に振り返るほど効果が出やすいです。週末にまとめて見返すより、「その日のうちに10秒」がおすすめです。これだけで、次回の購買場面で思い出しやすくなり、無駄遣いの抑止力になります。

 支払い方法にこだわるだけでなく、自分から支出を振り返る行動を取り入れれば、お金の使いすぎをグッと減らせます。

心の中にいる天使と悪魔に
打ち勝つためのシステム作り

「貯金しなきゃ」と頭ではわかっているけど、ついつい目の前の欲求に負けてしまう。実は、この人類共通であろう悩みは、私たちの心の中に「計画者」と「実行者」という2人の自分がいて、それぞれが別々のことを考えているからなんです。これを説明してくれるのが、サンタクララ大学のシェフリンとコーネル大学のセイラーの提唱する「行動生命周期仮説」という考え方(注2)です。

 行動生命周期仮説では、長期的な視点で物事を考える「計画者」と、今この瞬間の快楽を求める「実行者」という2つの自己が登場します。計画者は「将来のために貯金しよう」としっかり計画を立てますが、実行者は「今このレストランで美味しいものを食べたい!」などと短期的な欲求を優先しがち。つまり、「計画者」は未来の幸せをつくるために節約を促し、「実行者」は今の楽しみを求めてお金を使わせようとします。

 このような内部の葛藤が繰り返されるからこそ、貯蓄行動は単純な計算どおりには進まないのです。

 たとえば、給料が入ったばかりのときは「ちゃんと貯金しよう」と思っていても、セールや新商品を見かけると、つい財布の紐がゆるんでしまうのは自然なこと。

(注2)Shefrin,H.M.,&Thaler,R.H.(1988).The behavioral life-cycle hypothesis.Economic Inquiry,26(4),609-643.