こうした“人間らしさ”を含んだ行動生命周期仮説を踏まえると、貯蓄が難しいと感じる理由もなんとなく理解ができますよね。

 さらに、この理論では、自己制御の難しさだけでなく、改善のヒントも探っています。たとえば、この理論でも「自動積み立て」や「別口座への貯金」などの仕組みづくりは計画者を手助けし、実行者の誘惑から自分を守る方法のひとつとして推奨されています。

 要するに、貯蓄は単なる数字の問題だけでなく、あなたの心の仕組みを理解して上手に付き合うことが大切なのです。

いらないサブスクを
ダラダラ続けてしまうワケ

 現代社会は誘惑のオンパレードです。SNSを見れば広告が流れ、コンビニに入れば新商品がずらり。節約や貯金を考えていても、つい財布のひもがゆるんでしまうのは自然なことです。

 でも実は、「感情の扱い方」を少し工夫するだけで、お金の使い方は大きく変わります。

 そこで鍵になるのが感情知能(Emotional Intelligence)(注3)。これは「自分の感情を理解し、コントロールする力」のことです。

 たとえば、イライラしたときに「今の怒りは空腹のせい?それとも仕事のストレス?」と立ち止まって考えられる力です。感情知能が高い人ほど衝動買いが少なく、冷静にお金を使えることがマニパル高等教育アカデミーのアンナプルナとバスリの研究でわかっています。

 感情知能が高いと、心のクセ=バイアスにも気づきやすくなります。たとえば「過信バイアス」。自分の判断に自信を持ちすぎて「この商品は絶対お得!」と思い込み、つい買いすぎてしまうクセです。

 また「処分効果」と呼ばれる心理もあります。「損したくない」気持ちが強すぎて、サブスクの場合のように大して使わないモノをいつまでも持ち続け、結果的に無駄な出費を増やすパターンです。

 さらにやっかいなのが周囲の影響。みんなが同じモノを買っていると、「私も欲しい!」と流されてしまう。この現象は「ハーディング(群集行動)」と呼ばれます。感情のブレーキが弱いと、この流れに乗って散財しやすいのです。

(注3)Annapurna,R.,&Basri,S.(2024).The influence of emotional intelligence and behavioural biases on mutual fund churning frequency:Evidence from India. Acta psychologica,248,104426.