メサイア号が特攻する前、地球との最後の交信で、画面越しに家族に別れを告げるシーンは感動的です。とくに失明した指揮官のオーレンに息子が誕生していて、でも自分の目が見えないことは妻に伝えず、同僚に画面の様子を教えてもらいながら幼い息子に向って「カッコいいロケットだな」とか「お母さんを頼むぞ」と言うところは、ぐっときましたねえ。

助けてもらった命は
次世代に繋げないといけない

井上:失明の事実はもちろん、悲しみや恐怖といった本音も押し隠して、妻子の記憶のなかの自分は「笑顔の頼もしい夫、父親」でありたい。その気持ちが泣かせますね。

『人はなぜ特攻に感動するのか』書影人はなぜ特攻に感動するのか』(井上義和、坂元希美、光文社)

 さらに、オーレンの妻は、息子にはあなたと同じ名前(オーレン)をつけた、と言っていました。あなたの命のタスキはしっかり受け取った、というメッセージです。まさに死を覚悟したときは、未来が見えたときであり、「父になる」(編集部注/誰かのために命を懸ける特攻的なシーンで感動するには、「未来」「自発的な行動」「父になる」「祖国の想像力」の4つがキーワードになると筆者らは主張している)とき、ですね。

坂元:先ほど出た《タイタニック》では、タイタニック号が沈没して海に投げ出されると、ジャックはローズを板に乗せて自分が冷たい海に入ります。「子どもをたくさん産めよ」とローズに言って励ましながら、力尽きて沈んでいきました。

 ローズは生き残り、ジャックの姓「ドーソン」を名乗ってアメリカに根を張り、たくさんの子孫に囲まれて長生きをして、ジャックとの約束を見事に果たしたんですよね。

井上:ローズは、ジャックから命のタスキを受け取り、しっかりと未来に繋いだのですね。