「アメリカ・ファースト」という最強カード
そこでカービー氏は、第2次トランプ政権の「ディール」の論理に目を付けたのではなかろうか。トランプ氏は、「強いアメリカ」を象徴するアイコンを好む。もしユナイテッドとアメリカンが合併すれば、航空機保有数、路線網、収益規模など多くの項目でライバルを圧倒する、世界最強のエアラインが誕生する。
カービー氏が、トランプ氏に対してこう、ささやいても何ら不思議ではない――。「大統領、中東や中国の独走を許していいのですか。合併が叶えば、世界中の空に星条旗を掲げた巨大艦隊を飛ばし、再び米国が空の覇権を握ることができます。これこそが、真のMAGAではありませんか」と。
言うなれば、独禁法という法律論を、国家安全保障や経済的ナショナリズムという政治論にすり替える高度な交渉術である。古巣の事情も熟知するカービー氏なら、統合による相乗効果を、トランプ氏が好む言葉でプレゼンすることなど容易だろう。
アメリカン航空機、ダラスフォートワース空港にて Photo by Koji Kitajima
カービー氏の真の狙いは?
現実的には、この合併が成立することはあり得ない。独禁法の番人である米司法省は、たとえ政権の意向があったとしても、消費者利益を損なう事態に激しく抵抗するに違いない。2社が統合すれば、米国内の主要空港の多くで競争が消滅し、航空運賃は高騰し、サービスは低下の一途をたどるだろう。結果的に国民の反発を招き、トランプ政権にとっても新たな火種になりかねない。
では、なぜカービー氏はアドバルーンを上げたのか。その狙いは合併そのものよりも、その過程で引き出せる「妥協案」にあると考えられる。
ひとつは、中東や中国のキャリアに対する規制強化だ。ビッグ2合併が認められないなら、米当局に対して外資エアラインの乗り入れ制限を迫るなど交渉材料にする可能性がある。もうひとつは、国内における環境規制の緩和や空港使用料の引き下げなどを引き出すことも考えられる。







