母校は一生の財産

「東京女子医大(に通ったこと)は一生の財産」と明快に言い切るのは、都内でクリニックを経営するOさん(51歳、医師)だ。東京女子医科大学(女子医)は日本で唯一の女子医大だが、祖母の姉が女子医で学んだ日本でも初期の女医の1人で、Oさんは医師一族で育った。横浜市内の女子中高で難関国公立大の医学部を目指して猛勉強していたが、あまりにも成績が良すぎて学校推薦でするりと女子医への入学が決まり、卒業式では答辞を読んだ(成績トップで卒業した)という猛者である。

 私立医大は派手、という世間のイメージがあるかもしれないが、「女子医はもう、もともと各地・各校のトップクラスの女子ばかり、変わり者レベルのガリ勉ばっかりですから。試験前はジャージ姿で、鈍臭いくらいにしっかり勉強して。たまに合コンに行く時だけは髪の毛巻いておしゃれして、みんなに送り出してもらう。そんなギャップも心地いいんです」。

 ごまかしの効かない医師国家試験がゴール前で待つ医大・医学部では、勉強しないという選択肢はない。「勉強に集中したいのであれば、異性の存在は邪魔。女子医では、一緒に勉強しながら恋愛沙汰で揉めたりしません。また、男性におもねることがないので、たとえば実験で動物の命を奪わざるをえない場面でも、優秀な女子はそうした役割を恐れずに買って出て、医師の資質を整えていくんです」というOさんの口調には濁りがない。

 医師として働きながら、2人の娘を育てた。上の娘は生後2カ月から東京女子医大病院の院内保育園で育ち、自立した女性たちに囲まれて成長したために、「小さい頃から、医者になりたいというよりも女子医大に行きたいと言って」女子医大へ進み、現在は研修医だ。

「男性におもねるような行動や視線が一切ない環境が好きで、ものすごい“女子医”愛なんです。働く女医の生き生きとした姿、キレのいい会話のキャッチボール、自立した態度。それをかっこいいなと、この人たちみたいになりたいと憧れてくれた結果だと思います」

女子大の存在意義とは?

 女子大の存在意義については「すべてが共学になってしまうと、勉強しづらい子もいるのでは。女子が、自分のなりたいものになっていくことが大切。だから理念のしっかりした一部の女子大は残ると思います」と語る。「でも女子大に限らず、そもそも大学の数が多すぎるので『とりあえず大学へ』なんていう中途半端なところは淘汰されていい。それよりもこれからはAIにできないこと、“手に職”志向で、専門職を増やすべき」。厳しい国試をくぐり抜けたライセンス職である医師ならではの、クリアな大学観だ。

 娘さん同様に女子医愛を口にしてはばからないOさんだが、「卒業して一層、人的な繋がりが尊い」と感謝するのだという。女子医コミュニティーの中には優秀な人材がたくさんいて、「母校愛の強いおば女医たち」が助け合うので、例えば非常勤の医師を探していてもあっという間に見つかる。「人生で大事なのは自分の健康と医師免許と娘たち、と部活のOG会で話すと大ウケするんです。でも、本当にそれだけあれば生きていけるから」との言葉には、Oさんの努力と経験に裏打ちされた自信が輝いていた。