ジェンダーを意識し、フェミニズムを「正しく」知る

 少し若い世代のOGたちからいただいた意見の中には、ジェンダーやフェミニズムという言葉が顕著に出てくるようになる。総じて、アラサー以下になるとそのあたりの意識が当たり前のこととして浸透している印象だ。

 津田塾を卒業後、20代後半で再び母校へ社会人入学を果たしたEさん(29歳、マスコミ)は、進学の理由を「少人数制と女性のエンパワメント」と、はっきり口にする。「学生時代の満足度は95点。英語科目、地域研究、身体表現の教育、ヒューマンセクソロジーの講義は忘れられない。出版業界に進んだが、そこで役に立つ教養を学べたことは意義深かった」と非常に肯定的で、現在の津田塾生が「他大学に落ちてここしか入れなかった」「腐っても津田塾」と自嘲するのを「津田はいつから否定的アイデンティティになったのか」と嘆く。

「津田塾は偏差値が落ちたと受験業界がうるさい。逆風を感じるが、受験生には女子大という選択肢は“あり”と伝えたい」。女子大の未来に対しても「今後も残り続ける。日本のジェンダーギャップが大きい限り」と断言。20代後半という、おそらく社会人生活でさまざまな経験と思いを積んだであろう絶妙な年齢で、再び強い意思を持って女子大へ戻る女性がいることに、確かに女子大は“あり”なのだなと感じさせられる。

いまの在学生が女子大を選んだ理由

「共学の中高一貫校へ通っていたが、親の意向で女子大に進学した」Fさん(32歳、コンサル)は、「在学中の満足度は満点だが、共学を目指して必死に受験勉強していたため、最終学歴とするには……」と複雑な思いも滲ませる。しかし一方で「性犯罪やストーカー関連の報道に接すると、女子大には寮制度もあり、男性から身体を守るという観点だけでも、女子大が残る意義はあると思う」と、年頃の女子が潜在的にさらされる性被害の恐怖にも言及する。

「共学ではどうしてもフェミニズム論が嘲笑されたり、偏った思想だと揶揄されたりすることもあると聞いた。実際、入社後に同僚からイジるネタにされたこともある。個人的には、男女の違いは事実としてあると思うので、性差を知ってお互いに配慮しあうために、まずはそれぞれが置かれている現状を社会に出る前に授業を通して学べるのは貴重な機会だったと思っている」。女子大に入る前までは共学校へ通っていたFさんが経験的に得た男女観は、今のアラサー女子が実感する社会の(アン)バランス感を映していて、リアルだ。

 日本女子大(ポン女)での日々を「グループで春画作品について発表した。女子だけの環境だから春画のような下ネタも楽しめた」と振り返るGさん(38歳、マスコミ)も、「ジェンダーやフェミニズム、女性学の授業は、初めて学ぶことでおもしろかった」という。

「女子だけの環境だと、学祭などで机や椅子を動かす力仕事も女子だけでこなすので、卒業後も男に頼らず自分の力でどうにかすることが多い気がする」とのGさんの指摘は、筆者のような女子中高OGにも共通する性差観かもしれない。性差は大切に認識しつつも過大評価せず、女性でも(女性だからこそ)できる領域が十分に大きいことを信じて臆することなく行動できる性質は、経験から学んだ自信によるものだ。

「女の子なんだから」と行動を制限され、それが美徳であると教え込まれた子どもは、誰かに一方的に描かれたその境界線を自分が本当は越えられるということも知らないし、越える経験を得ることもない。……そのあらかじめ与えられた構造があったことを客観的に知ることこそが、フェミニズムなるものの核心なのかもしれない、と筆者は思う。この感覚が当たり前のものとして浸透したのが、今の30代以下ということなのだろう。