女子大の人気低迷は、昔与えられた役目を果たしたから
「女子大の人気低迷は、昔の“女子高等教育の入口”という役目が果たされたゆえの結果」と過去形で記すのは、津田塾OGのLさん(50歳、マスコミ)だ。役目はすでに果たされてしまった以上、「男女平等の社会=女子大不要」は時代の趨勢と認めながら、「男女の身体的能力差や、特に地方に根強く残る社会的役割の区別」ゆえに、女子大は「肉体的な力の差が脅威とならない安全な場所」「男女が対等に生きられるための土台」としての存在意義があると考える。「ここまで真剣に考えて、自分のこういうところが津田っぽいのかと気づきました」(Lさん)。
男性社会の色濃い業界に身を置く人にとっては、女子大の現状は歯がゆく見えているようだ。津田塾OGのMさん(52歳、不動産デベロッパー経営者)は「偏差値、ダダ下がりで残念極まりない! せっかく津田梅子先生が5000円札になったのに、そのブランド力を活かしきれていないのも機会損失と思う」と焦燥を滲ませる。「女子中高から女子大へ進んで女性ばかりの生育環境ゆえ、女性の能力を信じる!ということは自分の中での強み」と確信し、人材を採用する側としても優れた女子を輩出する女子大リソースへ期待するが、自社のインターンシップの様子を見て「コミュ力やリーダーシップがあるのはみな共学の学生だった。女子大は真面目にワークショップの課題には取り組む印象で、お利口さんといった感じ」と、失望は隠せない。
「インターンシップを行うにあたって女子大側とやりとりをしたが、保守的な発想で進取の気性が感じられず、これでは変わらないと思った。昭和女子大の坂東眞理子先生のようなイノベーションを起こすトップが来ないと女子大は変わらず、閉鎖的な世界で終わってしまうのだと思う。女子大の生きる道は、女性だからこそ社会を変えられる!と信じさせてキャリア女性を創出すること。キャリア教育やベンチャー支援に力を入れると差別化できるのではないか?」(Mさん)
「ここでしか育たない知性がある」――神戸女学院OGの提言
もう1人の経営者である神戸女学院大OGのNさん(47歳、PR・コミュニケーション)は、母校と恩師への並々ならぬ思いを溢れさせつつも、女子大の現状と継承されるべき価値を冷静に分析する。
「難関女子大が“中堅”もしくは“中堅以下”と位置づけられる時代になったことは、率直に寂しいと感じる。ただ、それを嘆くより先に問うべきは、『偏差値が下がったことで、あの学校の本質は変わったのか』ということ。単なる知識の伝達ではなく、物事の本質を見抜く“思考の枠組み”そのものを渡してくれた恩師との出会いは、共学の大規模大学では埋もれていたかもしれないが、あの規模感と文化、“人間の密度”の中で起きた。それが私の人生の幹になっている。大学の力は、偏差値だけではなく『誰がそこで何を問い続けているか』で決まるのではないか」(Nさん)
また、PR界での経験から、女子大が残る意義は「女性であることを理由に言葉を奪われない空間」にあるという。「混成の場では、女性は往々にして“空気を読む”ことに消耗する。女子大には、そういった消耗なしに自分の知性をまっすぐ使える環境があった。今、私は経営の現場で、言葉を持たない組織の脆弱さを毎日見ているが、女性が社会で言語力を磨く場として、女子大にはまだ果たすべき役割がある。それを意識的に設計しているかどうかが、生き残る女子大とそうでない大学を分けるのではないか」との指摘にも、筆者は首肯しっぱなしだ。
「女子大を“女性のためのセーフハウス”として消極的に守るのではなく、“ここでしか育たない知性がある”と自信を持って語れる場として再構築してほしい」との提言に漂う格調高さには、これが神戸女学院っぽさなのかもしれない……と圧倒されてしまった。







