女子大は「女子優遇」がない実力主義

 昭和女子大でデータサイエンスを教える男性教員のQさんは、今年度に第1期生を迎える総合情報学部の新設にあたって他大学から転職した。その前は共学の総合大学に長年籍を置いてきた経験から、女子大なる存在へ冷静な視線を向ける。

「新学部の設立に携わり、よく『女子大ならではの特徴はありますか』と聞かれますが、私個人の見解としては『ありません』という答えです。女子大ならではのカリキュラムではなく、男女を問わず学ぶ価値のあるカリキュラムを作りました。『女性データサイエンティスト』『女性デジタル革新者』ではなく、性別の冠をつけなくても専門家として通用する人材を育てるための学部だと考えています。女子が入りにくい領域に女子が入りやすくするためのトリガーになる、というのが1つの意義ですが、私が考えている意義はもっとシンプルで、男女共学の学校に行きたい人もいれば、女子だけの学校に行きたい人もいるだろう、という程度です」

「大学は教育の品質保証として、教育内容に関してはある程度の標準化が必要だと思います。しかし『どのような学生が集まるのか』に関しては大学ごとの違いがあっても良いと思います。すべての大学が男女比1対1だったら、その大学の中ではジェンダー多様性が成り立っているかもしれませんが、大学業界全体で見たら、男女比が同じ大学ばかりで多様性がありません。男女比1対1の大学、男子が多い大学、女子だけの大学、いろいろあってよいと思います」(Qさん)

 理数系の先生だけあってロジカルなのだが、そこはかとないユーモアを感じるのは気のせいだろうか。Qさんは「共学と女子大の両方で教えた経験からすると、女子大の学生に見られる特徴は、だいたい共学の女子学生にも見られます」と、これまたそっけないのだが、「リーダーシップ経験を積みたい人は女子大が向いていると思います。共学で教えていたとき、少人数授業で男子学生が頭角を現し始めると、女子学生はサブに回ることが多かったです。男子が本気を出すと遠慮してしまう女子が多いのか?と思います。女子大では男子に遠慮する、ということはないので比較的、リーダーシップをとる機会が多いと思います」。やっぱりジワッと面白い。

 Qさんならではの意見の中でも特筆すべきは、女性活躍推進時代における逆バイアスの指摘だ。「女子大だと『女子優遇』がなく実力勝負になるので、特に男女一緒の世界だとチヤホヤされるタイプの女子が『本当の自分の実力を知りたい』『伸ばしたい』場合は女子大に向くと思います。共学では『女子の方が優秀』とよく言われますが、私は同じ学力で選抜している以上、同じ大学で男女差が大きく出るのは、入学後の学習態度の差よりも、教員側の評価バイアスによるところが大きいと思っています」。

「共学に勤めていたとき、全体として女子の方が男子より成績が良かったのですが、それは授業の多くがレポートや平常点で成績評価をしていたことが影響していると思っています。私の担当科目では匿名化したレポートや、計算・選択肢で評価していましたが、男女で平均点に有意差が出たことはありません。女子学生は教員とコミュニケーションをとるのが上手な人が多い一方で、シャイで競争心が強い年頃の男子は教員との関係がギクシャクしやすいです。これは教員が意図して差をつけているわけではないので解決が難しい問題です。また、女性活躍推進の世の中なので、男子学生ばかりが活躍している授業は『うまく運営されていない』とされる一方で、女子学生ばかりが活躍している授業は『女子が活躍できている』と評価されるという逆差別的なケースもあります」

「このような共学での『女子優遇』に慣れてしまうと、社会に出た後に苦労する場面が出てくる可能性が高いです。会社でもしばらくは『若い女の子』でやっていけるかもしれませんが、ある年から急に女の“子”扱いされなくなり、やがてオバサンとして扱われ、男性と同等の扱いになります。『女子優遇』に慣れきってしまって、『男女平等』が『女性差別』に感じられてしまい、他責思考になり、成長が止まってしまう人もいます。逆説的ですが、男女が一緒に働く社会で長きにわたって実力で勝負していきたいという女子は、女子大を経験しておくと良いかもしれません」(Qさん)