【基準1】
今持っているポテンシャル・資質を発揮できる会社
自分の得意なことや、向いていることを生かせる仕事があるかどうか。自分に向いたことから始めれば、成果が出やすくなります。「これならやっていけそうだ」という自己効力感も生まれ、それが挑戦心につながり、新しい経験を求めるというプラスの成長スパイラルに発展します。
私自身は、臨床心理士を志していたこともあり、自分に次のような資質があると考えています。
・人間や組織を深く理解したいという探究心がある
・相手を尊重しつつ、本質に切り込むアサーティブ(お互いを尊重しながら意見を交わす)なコミュニケーションを志向する
・人を職業などのカテゴリーで見ず、全人格的に見ようと努めている
今の人事コンサルティングの仕事はこれらをすべて生かせており、もし新卒だったとしても今の仕事を選んでいると思います。
【基準2】
仕事の資源が充実している会社
「仕事の資源」という概念があります。(1)同僚との助け合い、(2)上司との信頼関係、(3)仕事の特性、(4)会社からのサポートの4つから成り、これらが豊かな職場では、働きがい(ワークエンゲージメント)が増すことがわかっています(※1)。
(1)は、チームで助け合いの文化があって、孤独を感じずに働けるかどうか。
(2)は、心理的安全性が高く、対話を通じてキャリア支援が得られる環境かどうか。単に優しい上司がいる会社ということではなく、厳しいことも率直に言ってくれる人がいるところです。そうでなければ人は成長できません。
(3)は、単純作業だけでなく多様なスキルが求められ、仕事の進め方に裁量があり、適切なフィードバックが得られるかどうか。自分で考えて動ける余地があるかどうかは、仕事の面白さに直結します。
なお、(4)にあたる教育制度や評価制度は、私自身はあれば嬉しいという程度で、(2)や(3)ほど優先順位は高くありません。優先順位は人それぞれなので、自分はどれを大事にしたいかを考えてみてください。
【基準3】
キャリア自律を尊重してくれる会社
会社に自分のキャリアを丸ごと預ける時代はすでに終わっています。
主体的にキャリアを考えるキャリア自律や、キャリアの大まかな方向性を決め、偶然のチャンスを生かしてキャリアを切り拓く「キャリアドリフト」の時代です。これを後押ししてくれる会社なのかどうかは絶対に確かめておく必要があります。
たとえば、社内公募制度の有無。会社が人事異動の権限を持っている従来のジョブローテーション制度(3年程度をめどに異動があり、複数の業務を経験する)とは異なり、社内公募制度は社内転職のように自分で空いたポジションに挑戦できます。手を挙げて社内プロジェクトに参加するしくみも同様です。
働くなかでいろいろな人に出会うことでチャンスが広がるため、社内外のネットワークを大切にする文化があるかどうかも重要です。極端な例では、退職者を裏切り者扱いし、社員が退職者と交流すると評価に響くような内向きな文化の会社も存在します。
【基準4】
自分のモチベーションの源泉に合う会社
働くモチベーションの源泉は大きく4つに分けられます。
仕事そのものの面白さやスキルの発揮を重視する「仕事型」、誰とどんな環境で働くかを重視する「職場型」、そしてワークライフバランスや報酬などを重視する「生活型」、知名度や社会的評価を重視する「組織型」です。
私自身は仕事型が7割、職場型が3割です。もし私が新卒だったら、仕事内容と配属後の上司・同僚との相性を最後まで確かめようとするでしょう。
もちろん、どれが正解ということはありません。しかし、自分のタイプを把握していないと、入社後に「こんなはずではなかった」というギャップを抱えることになります。
自分の「Can(資質)」と「仕事の資源」を
どう見極めるか
このように会社選びの際に、「やりたいこと(Will)」以上に大事なのは、「得意なこと・向いていること(Can)」ですが、自分のCanがわからない人も多いでしょう。その場合は、何をやっているときにエネルギーが出るかを自問してみましょう。
たとえば、部活でどういうときにモチベーションが上下したのか、また、それぞれ何が原因だったのかを考えてみる。アルバイトで単純作業は苦手でも企画を立てるときにはアイデアが次々と出た、といったことを思い出す。
このように過去の経験を棚卸しして、力を注いだこと、モチベーションが上がったり下がったりした瞬間を振り返ると、自分だけの行動パターンや志向が見えてきます。ちなみに、企業が「ガクチカ」を聞くのは、その人の強みを知るのに好都合だからです。
仕事の資源やキャリア自律の尊重については、外から確かめるしかありません。しかし、口コミサイトを参照するとしても、概要をつかむ程度にとどめるのが無難です。会社に恨みがある退職者の極端な感想も混在しているため、一次情報には遠く及ばないからです。
就活生は企業説明会や社員訪問、面接の逆質問を使って、実際に働いている人に直接聞けるという強みがあります。ぜひ自分から積極的に情報を取りに行ってください。
4つの基準を確かめるという意識で臨めば、それだけで引き出せる情報の質は格段に変わります。
【参考文献】
※ Demerouti, E., Bakker, A. B., Nachreiner, F., & Schaufeli, W. B. (2001) “The Job Demands–Resources Model of Burnout.” Journal of Applied Psychology.








