この結果、オスロ合意が締結された1993年には11万人だった西岸での入植者数は、2024年末現在では51万人にまで増加した。

 2023年2月、イスラエルの人権団体が政府の占領政策を批判すると、首相府は旧約聖書外典から「この土地は我々が他人から奪ったものではなく、先祖からの遺産である」との趣旨の記述を引用し、「イスラエルは占領国ではない」と反論した。いまやイスラエル政府自体が宗教的言説を使って、占領を正当化している。

図表:イスラエルの支配地の変遷同書より転載 拡大画像表示

「極右」政党と手を組んだ
ネタニヤフが狙ったもの

 イスラエルでは2022年11月に、わずか3年半で5回目となる総選挙が行なわれ、宗教シオニズムを掲げる3党が合計で14議席と躍進した。右傾化、宗教化の流れに加え、3党が合同候補者リストをつくったことにより、死票を減らすことができたためだった。

 ネタニヤフはそれまで「極右」と敬遠されてきた宗教シオニズム政党と手を組み、同年12月末に「史上、最も右の政権」と評される第六次政権を発足させた。

 ネタニヤフ政権は2023年に入るとすぐ司法制度改革に取り組んだ。右派や宗教派は以前から、イスラエルの司法をリベラルで世俗的すぎると見ており、右派政権発足を機に司法の権限を弱める制度改革に乗り出したのである。

 もちろん三権分立の原則を揺るがすような改革の試みは激しく批判され、連日のように反対デモが行なわれ、国論は二分された。その混乱の最中の10月7日、ハマスは未曽有の越境攻撃をイスラエルに行なった。

 それ以来、イスラエル軍は2年間もガザへ大規模攻撃を続けた。パレスチナ側の死者は停戦が発効した時点で6万7000人を超え、その後も増え続けている。