停戦の結果、捕らわれていた人質は遺体を含め全員が戻り、イスラエル軍はガザの西(海)側の地域から撤退した。だが依然としてガザ全域の53%をコントロールしている。

 一方、ハマスは残りの47%で支配を回復しつつある。建造物の80%近くが損害を受けたため、200万を超える住民のほとんどは住む場所を失い、ハマスが支配する狭い方の地域で避難生活を続けている。

 国連などによる支援活動が行なわれているが、イスラエルによるさまざまな制限のため、復旧・復興の見通しはまったく立っていない。

ハマスとの戦争が続いたのは
誰の意志によるものなのか

 戦争が2年間も続いたことについて、ハマス側の理由を別にして、ネタニヤフの個人的打算や連立内の極右政党の反対がよく指摘された。だがそれだけでは十分に説明できない。

 ハマスは停戦条件として、イスラエル軍のガザからの完全撤退を要求した。だがネタニヤフは、安全保障上の理由を挙げて完全撤退を拒否し続けた。ネタニヤフの拒否姿勢は人質の解放を遅らせると批判されたが、その一方でイスラエルのユダヤ人の多数は彼の姿勢を支持していた。

 2024年8月末に行なわれた意識調査では、ユダヤ人回答者の59%はネタニヤフの完全撤退拒否姿勢を軍事的・戦略的思考からと答え、ネタニヤフの個人的打算という回答の33%を大きく上回っていた。

 1年後の2025年8月に開かれた閣議でも、ガザの治安維持はイスラエルの手に残すと、事実上の占領継続を決定している。

 多くのユダヤ人が軍の残留を支持している背景には、軍がガザ全域から撤退すれば、ハマスが再びガザを拠点にイスラエルを攻撃してくる、というユダヤ人の多数が抱いている強い恐怖心がある。

 加えてもう1つ、世俗的であれ宗教的であれ、「約束の地」全域をユダヤ人が支配するべきだとする大イスラエル主義の思想がますます強まっていることが指摘できる。

 宗教シオニズム勢力の多くは、2005年のガザ撤退を「約束の地」の一部を手放した「過ち」と捉えてきた。そのガザでイスラエルは2年も戦い、多くの犠牲を出した。そのためユダヤ社会内で、ガザ占領や再入植を求める声は決して少数ではない。