「AEDで除細動を行うということは、すなわち『不整脈による心停止』です」と、関根医師が解説する。
「不整脈が起きる理由としては心筋梗塞があったり、あるいは他の病気が見つかる可能性もあるのですが、その女性の場合は病院に搬送され、精密検査を受けた結果、『特発性の心室細動による不整脈』であることがわかりました。ご本人がその半年後に僕に会いに来てくれ、ご自身の病状を説明してくれたんです」
女性は30代半ばで、後遺症もなく退院でき、関根医師を探して湘南鎌倉総合病院のERまでやってきたそうだ。
「そしてお礼を伝えてくれて……めちゃくちゃうれしかったですね。医者になって一番うれしかった出来事かもしれません」
AEDが適用できない場合も
胸骨圧迫をしっかり行うことが大切
これを聞くと「AED」が“万能の機器”のように感じる。確かにこの女性のようにAEDを使えば救命率は上がるのだが、実はAEDの適用となる人は限られているという。
「不整脈が原因であれば、そこに電気ショックを与えて正常な拍動リズムに戻せる。だからAEDが有効なのですが、実際には不整脈が原因でない心肺停止の場合が多いのです」
「例えば窒息、溺れてしまった、高いところから落ちて頭をぶつけて心肺停止になったなどのような場合、たとえAEDを装着しても、心電図解析が行われて『電気ショックは不要です。胸骨圧迫を継続してください』というアナウンスが流れるでしょう。ですから胸骨圧迫をしっかり行うことが大切です」
普段通りの呼吸かどうか
わからない時も胸骨圧迫を行う
それでは目の前で人が倒れたときの流れをおさらいしよう。
(1)まずは「大丈夫ですか」などと声をかけて反応(意識)があるかどうかを確かめる。
(2)反応があれば傷病者の訴えを聞いて必要な手当てを行い、反応がなければ周囲の人を呼んで協力を求める。協力者に救急要請(119番通報)と「AED」を頼む。
(3)傷病者の「胸」と「腹部」の動きを見て、呼吸の有無を確認する。動いていなければ心肺停止と判断し、ただちに胸骨圧迫を。普段通りの呼吸かどうか「わからない」ときも胸骨圧迫を行う。

《胸骨圧迫の方法》
胸の真ん中に片方の手のひらを当て、もう片方の手を重ねて組む。垂直に体重が加わるように腕を真っすぐ伸ばし、組んだ手の真上に肩がくるような姿勢にし、傷病者の胸が約5センチ沈み込む程度に強く圧迫を繰り返す。1分間に100~120回が目安
「この時、うまくできなくても大丈夫です」と関根医師。
心肺停止の時に胸骨圧迫を
10秒以上中断すると予後が悪い
「心肺停止の人に対して胸骨圧迫を行い、マイナスになることはありません。むしろ心肺停止のときに胸骨圧迫を10秒以上中断すると予後が悪いといわれています」
「ですから救急車のサイレンの音が聞こえても安心せず、救急隊にバトンタッチするその瞬間まで胸骨圧迫を絶え間なく続けてください。また体力を使う動作なので、疲れを感じたときにはすでに良質な胸骨圧迫ではなくなっていることが多いです。1~2分ごとに交代するといいでしょう」







