PayPal、Palantir Technologiesの共同創業者であるピーター・ティール氏
1970年代以降、人類の物理的な進歩は停止し、情報空間という狭い世界への逃避が続いている。第1回で語られたピーター・ティール氏の冷徹な事実認識は、テクノロジーの恩恵を無邪気に信じる我々に重い問いを突きつけた。では、この物理世界の停滞は、我々の現実の経済や社会にどのような影響を及ぼしているのか。シリコンバレーが振りまく楽観論のウソを暴き、AIブームの背後にひた隠しにされている「日米の巨額債務」という時限爆弾、そしてAIブームがもたらす「本当の経済的規模」について、稀代の思想家が口を開く。(取材・構成/小倉健一)
※本稿は、3月6日行われた「ピーター・ティール氏 特別講演」電通ジャパン、電通総研 経済安全保障研究センター主催講演の抜粋に解説を加えたものです。
シリコンバレーの人々が吹聴する
「進歩は加速する」という物語
テクノロジーの進歩について問い得る非常に大きな全体像の問いの一つは、その大部分がすでに過去に起きてしまったのか、それともまだ始まったばかりなのか、ということです。
すべての進歩を集計して考えるためのいくつかの異なる方法を見ていきましょう。
X軸が時間、Y軸が進歩の量を示す任意の指標であるチャートにおいて、進歩の大部分がすでに起きてしまった「S字曲線」(※最初は加速するが、やがて頭打ちになるロジスティック曲線)なのか、それともまだ始まったばかりの「指数関数的な曲線」なのか。Y軸は知識、寿命、GDP、あるいはこれらを統合した複雑な指標かもしれません。
科学技術の進歩という「豊穣な角」(※Cornucopian/ギリシャ神話に登場する、望むものが何でも出てくる魔法の角)は、過去にあったのか、それとも未来にあるのか?
もし過去にあったのだとすれば、進歩は鈍化し、先細りしていくことを予想すべきです。もし未来にあるのだとすれば、「明日は今日よりもずっと良くなる」「進歩は加速する」という楽観的な物語、すなわちシリコンバレーの人々が皆さんに信じさせたいことなのです。







