銀行が受け取った手数料は、売買金額の3%で450万円だった。金利で稼ぐより、手っ取り早くて金額も大きい。
こうした中小企業の本業とは異なる不動産購入の話は、特に地方で耳にした。地方の中小企業が、目減りするリスクが少ない都心のマンションを買うというのは、投資の王道とさえ言われる。こうした動きが、港区をはじめ東京の分譲マンション価格の押し上げの遠からぬ要因となっているのは間違いないと感じた。
築地本願寺そばに建てられた「プレミスト東銀座築地」や「アトラス築地」も、3戸と複数戸所有している法人オーナーが多い物件だ。賃貸住宅として貸せば、2戸~1カ月30~50万円の家賃収入が見込めるし、将来的な売却益も狙える。
なんといっても築地、銀座、というのは世界に通ずるブランドだ。売りたくなったら、買った値段より確実に高い金額で外国人が買ってくれるとわかっているわけで、ついつい2戸、3戸、4戸と買いたくなるそうだ。
こうした企業オーナーたちの即断即決の分譲マンション現金購入は、売る側にとっても都合がいい。そしてその件数が増えれば増えるほど、実需を目的とする層の買える物件が減っていき、「いいものはどんどん売れちゃいますよおぉ」という不動産会社の営業トークを現実にした。
私自身、経営者となり、本業とは別の安定した収入があることの有難みはわからなくもない。先行き不安な中で、社長として取るべきリスクヘッジと思うことさえある。しかし、銀行が本来すべきことは副業の誘いではないはずだ。
42兆円のコロナ融資は
どこへ消えたのか?
経済学者の野口悠紀雄氏は、著書『戦後日本経済史』でこう書いている。
《(80年代後半の)バブルは、単に日銀が金融緩和をしただけの理由で膨張したわけではない。バブル拡大の背後には、世界経済の変化によって製造業の資金需要が減少したこと、それに対応するために、金融機関(とくに長期信用銀行)が、ビジネスモデルを高度化するのではなく、不動産投機を進めたことにある》
かつてのバブルと同じことが繰り返されたのか。
ともかく、都心マンションが、ダブついたお金の行き先になった。政府が新型コロナウイルス対応へ用意した「コロナ予備費」12兆円のうち、9割以上が具体的にどう使われたかわかっていないと、日本経済新聞が報じた。
『強欲不動産 令和バブルの熱源に迫る』(吉松こころ、文藝春秋)
コロナ融資しかり、もしかすると、コロナ禍で行われた東京オリンピックの経費、1兆7000億円だって、不透明な費用はあるのではないかと疑ってしまう。
前述の不動産会社社長は、「ゼロゼロ融資」の功罪についてこう話した。
「金融機関の話だと、国からは、『いくら貸すように』という数字のノルマが課されていたそうです。だからとにかく融資しまくったと。もしこの指示が、『倒産件数を何割減らすよう考えて貸出をしなさい』という内容であれば本当に苦しい人たちへの配分になっていたでしょうね。うちは儲けさせてもらったからいいけど」
「ゼロゼロ融資」の総額は42兆円に上った。中小企業庁によると、2022年9月の受付終了までに約245万件の融資実績があったという。







