保育園の場合も、園単独での現場コストの低減は難しくとも、本部への集約によって、食材や資材の調達、人材の採用などで規模の経済性を効かせることが期待できます。また、保育園を地域に集中させるドミナント戦略を取ることで、保育士の急な欠員などへの状況にも人材の相互融通(ヘルプ体制)による「運営の安定性」が可能となります。
保育業界が典型的な「断片的市場(フラグメンテッド・マーケット)」であることもこの動きを加速します。全国約4万カ所の保育施設の多くは、地域密着型の小規模な社会福祉法人などが運営しており、経営者の高齢化や後継者不在の問題も重なっています。大手事業者への事業譲渡が増加する構造的な条件が、いわば整ってしまっているのです。
待機児童と保育業界の経営問題から
学ぶべき「3つのこと」
待機児童問題の解消と保育園の経営危機――これら2つの現象は、実はコインの表裏です。ここから学べることを3つにまとめてみました。
成長の終焉 「成長市場はいつか必ず成熟する」
需要が伸びている時期の戦略をそのまま続けることは危険であり、プロダクトライフサイクルの変化に応じた戦略転換が不可欠です。
固定費の罠 「固定費型ビジネスでは、稼働率のわずかな低下が致命傷になる」
損益分岐点に相当する定員充足率91.8%に対し、全国平均88.4%が下回っている事実は、多くの園がすでに赤字転落の瀬戸際にあることを意味します。ホテル、航空、ジムなど固定費比率の高い業界に共通する教訓です。
課題の連鎖 「課題の"解決"は終わりではなく、次の課題の始まりである」
待機児童の解消が保育園の経営危機を生んだように、ある課題の解決が構造的に別の課題を生むパターンを認識しておくことは、事業戦略にも社会課題への取り組みにも不可欠な視点です。
「待機児童をなくすこと」が目標だった時代は、いよいよ終わりを迎えつつあります。これからの保育業界の本当の勝負は、「子どもたちにとって本当に価値ある保育とは何か」を問い直すところから始まるのかもしれません。







