加藤登紀子さんと高倉健さん加藤登紀子さんと高倉健さん 協力:高倉プロモーション

ある日突然、高倉健の妻役として映画「居酒屋兆治」に出演しないかとオファーを受けた歌手・加藤登紀子。尻込みし、思わず断った彼女を口説き落とした言葉とは?歌手生活60年で加藤登紀子が経験した「まさか」な出来事を回顧する。※本稿は、歌手の加藤登紀子『「まさか」の学校』(時事通信社)の一部を抜粋・編集したものです。

女優でもないのに
高倉健の妻役に大抜擢!

 とっておきの出会い物語、「高倉健さんとのま・さ・か」。

 私と健さんとの大きな出会いは、1983年の映画「居酒屋兆治」で高倉健さんの演じる兆治の妻、茂子の役を演じたこと。

 そう、それに尽きる。でも思い出すほどに、健さんとのご縁が心に深く刻まれている。

 映画への出演依頼が届いた時、私はとっても驚き、お断りした。

「健さんのファンの1人として思います。女優でもない私のようなものが妻役なんてダメです」

 すると、東宝のプロデューサーの方が、わざわざ私の事務所まで再度プッシュに来られた。

「女優はいっぱいいますが、加藤登紀子は1人しかいない。その加藤さんとして出演してほしいんです」と。

 そうまで言われたら、私もお引き受けするしかない。「よろしくお願いします」と頭を下げたのだった。

 でもこの後、帰りのエレベーターが来るまでにふっと間が空いて、振り向いた彼の口からこんな言葉がこぼれた。

「健さんね、あんまり美人が好きじゃないんですよ」

 一拍おいて「ああ、そうなんですね!」と深く頷いた私。

 なんだかすごく納得できて、まあ選んでいただいた理由もわかり、健さんの気持ちもわかり、嬉しかった!(笑)