職場で信頼できない人は「何気ない一言」を忘れている。じゃあ、信頼できる人は?
それを語るのは、「感じのいい人」に生まれ変われるとっておきのコツを紹介する書籍『気づかいの壁』の著者・川原礼子さん。職場で困っている人を見かけても、「おせっかいだったらどうしよう…」と躊躇したり、「たぶん大丈夫だろう…!」と自分に言い訳したり……。気づかいをするときには、つい「心の壁」が現れてしまい、なかなか一歩が踏み出せないことが、あなたにもあるのではないでしょうか?
この連載では、「顧客ロイヤルティ」をベースに、ビジネスセミナーへの登壇やコミュニケーションスキルの研修講師を通して、全国200社・2万人以上のビジネスパーソンに向けて教えてきた「気づかいのコツ」について紹介しましょう。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

職場で信頼できない人は「何気ない一言」を忘れている。じゃあ、信頼できる人は?Photo: Adobe Stock

しっかりと「覚えていてくれた」

 今年2月に行われた冬季オリンピックでは、フィギュアスケートのペア種目、三浦璃来選手・木原龍一選手(りくりゅうペア)の活躍が、日本中に大きな感動を届けてくれました。

 同時に、その快挙を伝える解説者・高橋成美さんの熱意ある言葉の数々にも、大きな注目が集まりました。
 オリンピック閉幕後のある番組でのこと。かつてオリンピック代表だった安藤美姫さんが、高橋さんについて、このような話をされていました。

「木原選手が今あるのは、高橋成美さんが最初のパートナーだったから」
「ペアスケートの道を開いたのは高橋さん」

 かつて高橋さんの献身を、安藤さんがしっかりと「覚えていてくれた」
 その事実に、高橋さんが生放送中に涙を流したシーンを目にして、私にもこみ上げるものがありました。
 人は、誰かが自分の頑張りや、かつての足跡を覚えていてくれることに、深い感動を覚えます

「記憶」が心を動かす

 先日、私がある企業で開催した「気づかいワークショップ」でも、この「記憶」がもたらした温かなエピソードに出会いました。

「あなたがされて嬉しかったこと」を分かち合う演習の中で、ある社員の方がこんなお話をしてくださったのです。

「先日、少し体調を崩してしまった時のことです。翌日、会社へ行ってみると、先輩社員が『これ、食べて』と、免疫力アップの効果があるグミをそっと渡してくれました。昨日、私が体調を悪そうにしていたことを覚えていてくれていたんだ。そう思うと、そのグミ以上に、先輩の気持ちが本当に嬉しかったんです」

 ここにもまた、誰かの「記憶」によって心が動かされた瞬間がありました

 自分の何気ない一言を覚えていてくれる
 自分のちょっとした変化を忘れないでいてくれる
 そして、その記憶に基づいて、心を寄せる小さな行動をしてくれる。

 あなたにも、そんなことをされた経験がありませんか?

「小さな言動」を覚えておこう

 気づかいとは、決して特別な才能ではありません。
 相手の小さな言動を記憶しておくこと。
 それだけでも、誰かにとっての大きな勇気づけになるのです

 新人さんを迎える季節。
 今日、あなたの職場にいるフレッシャーのことを、一つだけ思い出してみてください
 その小さな「記憶」が、彼らの明日を支える力に繋がるかもしれません。

川原礼子(かわはら・れいこ)
株式会社シーストーリーズ 代表取締役
元・株式会社リクルートCS推進室教育チームリーダー
高校卒業後、カリフォルニア州College of Marinに留学。その後、米国で永住権を取得し、カリフォルニア州バークレー・コンコードで寿司店の女将を8年経験。
2005年、株式会社リクルート入社。CS推進室でクレーム対応を中心に電話・メール対応、責任者対応を経験後、教育チームリーダーを歴任。年間100回を超える社員研修および取引先向けの研修・セミナー登壇を経験後独立。株式会社シーストーリーズ(C-Stories)を設立し、クチコミとご紹介だけで情報サービス会社・旅行会社などと年間契約を結ぶほか、食品会社・教育サービス会社・IT企業・旅館など、多業種にわたるリピーター企業を中心に“関係性構築”を目的とした顧客コミュニケーション指導およびリーダー・社内トレーナーの育成に従事。コンサルタント・講師として活動中。著書に5万部を突破した『気づかいの壁』(ダイヤモンド社)がある。