親が子にしっかりと
境界線を示すことが大切

 しかし幼い子どもは、まだ意思表示が上手にできません。それだけでなく、自他の境界線がまだ曖昧な子どもは、身近な大人(親)の行動や態度、言葉を、すべて自分に関連づけてしまいます。

 たとえば仕事がうまくいかないことで親がイライラしているとき、子どもはそのイライラの原因が自分にあると信じてしまいます。誰かが悲しいと、自分が悲しませてしまっていると信じたり、また自分も同じように悲しくなってしまったりします。

 だからこそ、親がしっかりと境界線を示してくれることが大切です。親がイライラしていて、その原因が子どもにないときは、親が自分の責任でイライラに対処しなければいけません。そこで子どもに当たり散らしたり、態度でイライラを示したりすると、子どもと親の間の境界線は薄く弱くなって、子どもは「私が悪いんだ」と考えるようになってしまいます。

 境界線を示すためには、言葉による説明も有効です。「今、私(親)は仕事で疲れている。疲れの原因はあなたとは関係なくて、だけど普段のようにご機嫌ではいられないかもしれない。いつもより無口でイライラしているように見えて不安にさせてしまうかもしれないけれど、それはあなたのせいではないし、あなたに向けたものではない」というようにです。もし親のイライラの原因が子どもにある場合(勉強しない、片付けしないなど)、親は子どもに「こうしてほしい」と言葉で明確に伝える必要があります。

 それをせず、態度だけでイライラを示して子どもに察することを要求すると、子どもは親の態度から気持ちを汲むクセがついてしまい、親子の間の境界線が曖昧になってしまいます。いちばん身近な大人である親との間の境界線が曖昧になると、それ以外の他者との間でも、上手に境界線をひいて、その厚さを調節することが難しくなってしまうのです。

境界線の厚さを
適切に調節できるか

 いま「厚さを調節」と書きましたが、実は境界線の厚さはそのときどきによって調節可能です。他者を理解する機能は維持しつつ、自分にとって害になる相手との間では分厚くなって身と心を守る、それが境界線の調節機能です。私たちは、初対面の相手がどんな人かわからないとき、相手からの情報を得ながら、少しずつ自己開示していきます。