私自身も、まとまった時間があれば、読みたかった本を読んだり普段は取りかかれないような書き物を進めることがあります。家の片付けの合間にすることもありますし、旅行先でそれらをすることもあります。こうした時間の使い方は、単なる休養とは別の意味で、気分転換しながら、頭を整え、視野を広げてくれます。

 実際、休みの間に「こんな企画を書いたら面白いのではないか」「会社をこうすればもっとよくなるのではないか」と自然に考えることがあります。好きなことや、責任を持って取り組んでいることは、環境が変わっても頭のどこかに残るものです。普段とは違う時間の流れの中にいるからこそ、仕事が別の角度から見えてくることもあります。

 以前、家族でフランスを旅したとき、田園風景の中を走る観光バスの中で2冊の本の企画が浮かんだことがありました。普段とは違う場所に身を置いていたからこそ、発想が自由に広がったのだと思います。帰国後に編集者へ提案すると、どちらも形になりました。

 旅行中に限らず、消費者として店を眺めたり、サービスを受けたりするだけでも、自分の会社やお客さまへの向き合い方を、普段とは違う角度で考えるきっかけになります。土に触れるのもとてもいいと思います。

 もう一つ大切なのは、家族との時間です。仕事に追われ、家族と十分に過ごせていない人は多いはずです。お子さんがいる方なら、なおさらでしょう。長期休暇はそうした家族との時間をしっかり取る機会でもあります。

本当に優秀なリーダーは
「仕事を忘れなさい」と言わない

 こうしたリーダー自身の姿勢は、部下への接し方にも自然につながってきます。本当に疲れ切っている部下には、「まずしっかり休みなさい」と声をかけるべきです。けれども、そうではない人にまで「仕事のことは一切忘れなさい」と言う必要はありません。休みの間に仕事のことが頭に浮かぶのは、ごく自然なことだからです。

 むしろ、責任を持って仕事に向き合っている人ほど、そういうことはあるはずです。休みを前にして、部下に「仕事のことは忘れてこい」と決まり文句のように言うリーダーが、良いリーダーだとは私は思いません。仕事を、できれば忘れたいもの、離れたいものとして捉えている本音が、そこに透けて見えるからです。そういうリーダー自身が現在の仕事に不向きなのかも知れません。