集中力とは、集中し続ける力ではありません。注意が逸れない力でもありません。注意が逸れたことに気づき、必要な場所へ戻せる力なのです。
実際、スポーツの現場でも、集中が一度も切れない選手などいません。大事な場面で、注意が結果や評価、失敗の記憶に引っ張られることは、誰にでも起こります。問題は、そのこと自体ではありません。どれだけ早く、「今、自分が向けるべき注意」に戻れるか。そこに、実力を発揮できるか、できないかの差が生まれるのです。
ホークスの現場でも、私たちが取り組んできたのは、「集中を切らさないこと」ではありませんでした。むしろ、集中が逸れることを前提に、戻す先、戻し方を磨くことです。
ミスをした直後、凡退した直後、失点した直後。感情が動くのは自然なこと。その中で、「次の一球で何に集中するのか」「今、自分がやるべき役割は何か」に何度でも注意を向け直していくのです。
具体的なリカバリーの仕方を
“ベテラン”は知っている
一流の選手でも、集中が乱れないわけではありません。そのつど戻しているだけです。そして、その戻し先が具体的です。だから、さまざまな感情があっても、次の行動に迷うことがないのです。
ホークスでいえば、柳田悠岐選手、中村晃選手、近藤健介選手といった、いわゆる“ベテラン”と呼ばれる選手は思考がとてもシンプルで、具体的な戻し先を持っているように感じます。
『集中力革命 ブレても力を発揮するメンタルの技術』(伴 元裕、Gakken)
実績のある選手でも、ミスや失敗、注意が逸れてしまうことは必ずあります。ただ、そういったケースでも「どこに戻ればいいか」を知っている。だからこそ、長い不振もなく、プロという厳しい世界で何年も活躍を続けられるのです。
集中力とは、常に集中していることではありません。注意が逸れ、感情が動き、それでもなお、自分がやるべき行動に注意を戻せること。その力こそが、集中力であり、メンタルスキル(編集部注/筆者は、メンタルは性格の問題ではなく、伸ばせるスキルだと考えている)の中核なのです。
この視点に立つと、「集中できなかった」「気が散ってしまった」という評価そのものが、少し違って見えてくるはずです。
大切なのは、注意が逸れたかどうかではなく、戻れたかどうか。繰り返しになりますが、集中力とは「注意を保つ力」ではなく、「注意を戻す力」なのです。







