社会問題から一転、「空き家」を地域活性化の源に
山翠舎・山上浩明代表取締役社長 Photo by KUNIKO HIRANO
――日本では、古木の活用が現代社会にどのようなメリットをもたらすと思いますか。
山上 まずは、新たな市場をつくり出せることがあります。
古木はリサイクル材ではなく、空間やプロダクトの価値を高めるアップサイクル材、あるいはそれ以上のものと位置づけていますが、これまで日本ではそのように古材を扱う事業者をほとんど見かけませんでした。
そのため、新しい産業の創出となり、国内での流通はもちろん、すでに海外での需要も認められていることから、経済面でも寄与できると考えます。
次に、日本の社会課題である「空き家」問題の一つの解決策になります。
先述の通り、現在、日本には約900万戸の空き家があり(※1)、その数は今後も増え続けると見込まれています。その点、古木は空き家である古民家の解体により供給されます。廃材として捨てられるはずだった古材が、価値ある古木として利用されることになるのです。
一本一本の素材としてだけでなく、古民家自体の活用もあります。古民家の所有者と運営者、そこをつなぐ当社の三者で構成する「継手ソリューション」(※2)により古民家を再生すれば、再び社会インフラとして機能させることが可能となり、空き家の増加で苦悩していた地域の活性化にもつながります。
そして、それ以上に現代社会に与える大きなインパクトとして、時間を経るほどに生活や物の価値が向上する社会を実現できることです。
元来、人は自然素材とともに生きてきたため、長い歴史が詰まった古木に向き合うと、潜在的な記憶が呼び覚まされて心地よさや安堵を感じるのではないでしょうか。
現代人が忘れていた感覚。大量生産、大量消費により新しいものに囲まれている現代の暮らしでは、なかなか感じることができないぜいたく。
古木の存在自体が、経年の価値を私たちに気づかせてくれるのです。それこそ、私たちが考える「時間資本」です。
※1 令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(総務省)
※2 古民家を長く維持するため所有者と運営者を分離した経営を可能にするプラットフォームを構築、両者を結ぶ(=継手となる)問題解決策。「分散型ホテル」(「上」参照)はその実践例







