ちなみに四角いアジア型の足なのに先の尖ったデザインのものを履きたかった私は、パリでは散々靴に悩まされ、パーティーの帰りはよく裸足で帰ったものです。今ではパーティーにもあまり行かないので、足にまったく負担のないスニーカーを履いています。

「それが靴だとあなたは思ってるの!?」

 友人であり、高級紳士靴ブランドの四代目当主オルガ・ベルルッティの自宅に行くと、彼女は私の靴を見る度にそう叫んでいたものです。

パリジェンヌは
天然素材にこだわる

 夏はリネン、冬はカシミア。

 ジェーン・バーキンにとって、それは基本のきのルールだったようです。

 ある夏、今では覚えていませんが、おそらく私が合成繊維のトップスを着ていたのでしょう。ジェーンはまじまじと私を見ると、黙ってホテルの部屋に戻り、白のリネンの半袖シャツを持ってきて、「こっちの方が涼しいわよ」と言いながら、それを渡しました。

「メルシー」と言ってジェーンと同じその白シャツに着替えたのですが、オーバーサイズの男物のシャツは、センスのいいジェーンが着こなせば颯爽として見えるのに、私が着るととても貧相に見えるのです。

 服の素材はその国の気候によって変わるでしょうし、誰もがジェーンのように気軽に高価なカシミアを買えるわけでもないけれど、もし買えたとしても、高湿度の日本では虫も繁殖しやすく、次のシーズンにとり出してみるとそこらじゅうに虫食いが、という悲惨なプティ・ドラマに出くわす可能性があります。

 別のパリの友人は、「アンダーウェアは絶対シルクに限るわ」と言っていました。

 パリブランドの「シモーヌ・ペレール」のシルクの肌着シリーズは、身につけただけで、格上のレディになった気分になれるし、ナイトショーツも解放された感じで心地いいものです。

 シルクは真夏にもいいとその女友達が主張するので、日本の猛暑では通気性が良くないし、肌にまとわりついてくるのでとても我慢できない、と反論したところ、「シルクはね、外気の熱気を遮断してくれるから、夏に適している」と言い張るのです。

 最近、鎌倉の腰越海岸の古民家から高円寺のマンションに越してきたばかりですが、新居ではカーテンではなく、分厚いグレーのリネンのシーツを窓に掛けています。

 以前、南仏の小さな町、サン・ジュニエ・ドルトの家で、親戚のマデットおばさんがやっていたのを見て、すっかりこの「シーツのカーテン」が気に入ったからです。Bのイニシャルが刺繍された、買ったときには19世紀のものだと言われたシーツです。

 晴れた日には淡い黄金色の光が、ごわごわしたリネンを通してうっすらと部屋に入ってきて、現実離れした美しい光に包まれています。