断熱性能を維持すべきワケ
「中古」という選択肢も
ここまで判断する前に確認すべきポイントを見てきたが、もう一つ、判断を誤りやすい落とし穴がある。それは、コストが上がった分を断熱材のグレードダウンで吸収しようとすることだ。
住宅の断熱基準は今まさに引き上げが続いている過渡期にある。省エネ基準の義務化に伴い、2030年には断熱等級5ないし6が標準となる流れが業界全体で進んでおり、このタイミングで等級5から等級4へ下げてしまえば、5年もたたないうちに性能面で見劣りしかねない。断熱は日々の光熱費だけでなく、将来の資産価値にも関わる。もちろん、検討を重ねた結果、調整せざるを得ない場面はあるだろう。ただ、「断熱材コストが上がったからグレードを下げよう」との判断に至る前に、一度立ち止まって考えてみてほしい。
では、コストを抑えながら住まいの質を守るにはどうすればよいのだろうか。一つの現実的な選択肢が中古住宅の存在だ。すでに建物が存在する中古住宅は、資材価格の急騰に直接左右されにくい。国も中古住宅の流通を後押ししており、2026年度の税制改正では住宅ローン減税が手厚く見直され、リフォーム補助金も充実してきた。新築にこだわらず中古住宅を選択肢に加えることで、資材変動に振り回されにくい住まい選びが可能になる。
一方で、リフォームを行うケースでは、購入後に手を入れる箇所には当然、資材高騰の影響があることも念頭に置いておかなければならない。加えて、中古住宅は新築と違い建物の履歴が見えにくい。ホームインスペクション(住宅診断)を活用し、構造や雨漏り、シロアリ被害の有無を購入前に把握しておくことが、安心して中古を選ぶための第一歩になる。
ウッドショックのとき、木材価格は一時的に落ち着いたものの、最終的に元の水準に戻ることはなかった。今回も同様の結果となるだろう。住宅コストは上がり続ける。その現実を受け入れた上で、どう動くかが問われている。だからこそ、混乱のさなかに焦って動くのではなく、総額を把握し、契約条件を確認し、冷静に判断していただきたい。新築か中古かにこだわらず、選択肢を柔軟に持つこと。「どの家を買うか」ではなく「どのリスクを取るか」を軸に据えることが、この先の住まい選びで後悔しないための備えになるはずだ。
(株式会社さくら事務所創業者・不動産コンサルタント 長嶋 修)
さくら事務所公式サイト
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