部下の価値観を深堀りする
「2つの質問」とは?

 そこで初期の1on1では、近況に続いて次のような“価値観にハッと気づく質問”を差し込むことが効果的です。(私は「ハッと1on1」と呼んでいます。)

「○○さんにとって、どんなときに“働く充実感”を感じますか?」
「スキル・仲間・社会貢献など、特に大事にしたいのはどれですか?」

 いきなり価値観だけを聞くのではなく、たとえば、「アイスブレイク→最近の出来事→そこにある価値観の整理」という段階を踏むことで、自然に深い対話へ移れます。

 近年では昇進よりも、スキルを身につけたい/社会課題を解決したい/良い仲間と働きたいといった「心理的成功(自分にとっての充実・幸福)」を軸にキャリアを考える人が増えています。これは「プロティアン・キャリア」と呼ばれる新しいキャリア観です。

 だからこそ、この「価値観への理解」が早い段階でできると、その人への関わり方・任せ方・支援の方向性が格段に明確になっていきます。

 ここで、少し話がそれますが、「部下のインサイト」についてお話をさせてください。

 突然ですが、あなたはコカ・コーラを飲んだことはありますか? 好きな人もそうでない人もいると思いますが、子どものころに飲んだ「コーラの味」をパッと思い出せる人は少なくないはずです。

 1980年代に、コカ・コーラ社がペプシの猛追に危機を感じて、「ニューコーク」を開発・発売したことがありました。ペプシに勝つために「ペプシよりおいしいコーク」を目指して、大規模な試飲テストを実施したそうです。完成したのは「オールドコーク」よりも甘くまろやかな「ニューコーク」。

 大勝負をかけて市場のオールドコークをニューコークにごそっと入れ替えたのですが、結果は目を覆いたくなるくらいの大惨敗でした。コークファンから大ブーイングが巻き起こり、結局、数か月後には以前と同じ「コカ・コーラ・クラシック」に再度置き換えたことで、最終的にファンは大喜び、期せずしてブランドの再構築に成功した、という話です。

 コカ・コーラ社は「顧客はよりおいしいコーラを求めている」と思い込み、データを信じて甘くまろやかなニューコークを開発しました。ところがマーケットが求めていたのは味の革新などではなく、慣れ親しんだ「コーラらしさ」だったわけです。

 このストーリーから学べるのは、顧客の深層心理、つまり顧客インサイトの理解がいかに重要であるか、です。

 なぜこんな話をしたかというと、同じくらい「従業員インサイト」の理解が重要だと私は思うからです。