『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク
三田紀房の起業マンガ『マネーの拳』を題材に、ダイヤモンド・オンライン編集委員の岩本有平が起業や経営を解説する連載「マネーの拳で学ぶ起業経営リアル塾」。第64回では友好的TOB(株式公開買い付け)と敵対的TOBの違いについて解説する。
あんたウチの会社を買収したいんだろ?
株価の低迷するアパレル企業・T-BOX。主人公で代表の花岡拳は、ライバル・一ツ橋商事の井川泰子からの業務提携の申し入れを受け、会談の場を設ける。そこで花岡は、「回りくどい話はやめよう」と切り出し、井川にこう尋ねるのだった。
「要するに井川さん……あんたウチの会社を買収したいんだろ?」
「俺が持ってる会社の株…買うのにいくら出す?」
あまりにストレートな発言に面食らう井川だが、花岡はこう続ける。T-BOXの発行済み株式は5万株で株価5万円前後。そのため時価総額は25億円ほど。その37%を花岡が保有しているため、それを買い取るだけで3分の1の株式を取得できる。それを友好的TOBで株式を譲渡するという。
花岡は「欲しいんならくれてやるから、そのかわりさっさと値段をいえよ」と挑発するように語る。その態度にたきつけられた井川は、約8億円のプレミアムをつけた27億円での買収提案をする。
本来ならば、花岡の持つ株式の価格は25億円の37%で約9.3億円。TOBでは株主が買収に同意をするため、2〜3割のプレミアム価格をつけて買収提案をする。だが井川は、2倍のプレミアムに、さらに8億円を上乗せした。
それでも花岡は「最低100倍!900億だ!」と、井川の提案を蹴るのだった。
「友好的だから善」「敵対的だから悪」なのか
『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク
TOBとは、株式の買い手が、価格や期間、買い付ける株数をあらかじめ示したうえで、株式をまとめて買い取る手法である。ざっくりとした説明になるが、市場で少しずつ株式を買い集めるのとは異なり、買収の条件を表に出さなければいけない。
花岡たちが語るように、TOBには、大きく分けて「友好的」と「敵対的」がある。
違いは単純で、買収対象となる企業の経営陣が賛同しているかどうかだ。経営陣と買い手が事前に話し合い、業務提携や資本提携の延長線上の議論として進むのが友好的TOB。これに対して、経営陣が反対していても、買い手が株主に直接「この条件で売ってほしい」と迫るのが敵対的TOBである。
重要なのは、「友好的だから善」「敵対的だから悪」という単純な話ではないことだ。経済産業省が公開している「企業買収に関する指針」でも、企業価値や株主共同の利益を高めるかどうかで買収の是非を判断すべきとしている。
「友好的TOB」を提案しつつ、井川を挑発する花岡。最終的に怒った井川が「敵対的TOBを仕掛ける」と言い放つ。焦った井川の部下・高野雅人が「冷静になって下さい!ここは一時退却です」と止めに入るが、両者を取り巻く環境は大きく変化することになる。
『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク
『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク







