レアアースの価値は、採掘した原料(酸化物の粉末)ではなく、モーターやミサイルの誘導装置に使える「高性能永久磁石」へと仕上げる最終精錬工程にある。この工程において、日本の信越化学工業やプロテリアル(旧日立金属)などの日本企業の技術は、他国の追随を許さない。

 つまり、原料が中国産であろうと、ベトナム産や南アフリカ産であろうと、日本の精錬・加工技術さえあれば「製品」になる。中国が原料を武器化しても、日本が「加工の窓口」を東南アジアやアメリカと直接結べば、中国をサプライチェーンから完全にバイパスできる構造がすでに存在する。中国以外の国を日米で囲い込むことで、中国のレアアースカードを無効化できるのである。

 高市首相は現在、アメリカと呼応する形で、この「脱中国レアアース体制」を構築しつつある。

 タングステンでも同じ動きが起きている。超硬工具や防衛装備に不可欠なこの戦略物資について、中国は禁輸措置に踏み切った。しかし皮肉なことに、この措置をきっかけに、日本企業ではベトナムのヌイパオ鉱山など代替供給源への切り替えが整いつつある。中国の「脅し」が、脱中国へと踏み出す「重い腰」を上げさせたのだ。

 トランプ大統領がCEO軍団で政治的・経済的圧力をかける一方、日本は精錬技術と環境技術をパッケージでASEANに提供し、中国に依存しない資源サプライチェーンを実務レベルで構築している。「ディールのトランプ」と「技術の日本」という役割分担だ。中国のレアアースカードが機能しなくなりつつある背景には、この日米の補完関係がある。

 日本の報道を見ると中国の外交的勝利と報じたものが多いが、あまりに浅薄な見方だろう。細部を丁寧に読み解けば、「体面」を守るために「実」を差し出すしかない習主席の悲哀が見えてくるはずだ。

「中国国内で地位を保つために、アメリカにお膳立てしてもらうしかない習主席」というのが、今回の会談の本質である。まさに「裸の王様」だ。

(評論家、翻訳家、千代田区議会議員 白川 司)