習主席を通して「中国を動かす体制」作り

 アメリカが習主席の「体面」を整えた背景には、習主席の政治的立場の危うさがある。異例の3期目という制度破壊による続投、経済の長期停滞、軍高官の大量粛清など、習主席の正当性がかなり弱体化している。

 ただし、習主席のトップダウンですべてが決まるという今の中国の政治体制は、習主席には体面を整えるだけで実のある譲歩を引き出しやすく、アメリカにとって都合が良い。習体制が弱体化すると、むしろ今後の交渉がやりにくくなるため、アメリカとしては、中国は弱体化させたいが、習体制は弱体化させたくないのである。

 それどころか、もし習主席が失脚すれば、核保有国である中国が制御不能になるリスクすらある。

 トランプ大統領が最も嫌うのは「読めない相手」であり、今の習主席は「交渉しやすい相手」である。ニクソン元大統領の関与政策が「中国を豊かにすれば民主化する」という期待ベースだったとすれば、トランプ大統領の戦略は「依存と監視で行動を縛る」管理ベースだと言える。

 上述した「二国間委員会の設置検討」のように、アメリカは今後、習主席を介して中国をコントロールしていく策をさらに強化していくものと考えられる。そのためにも、弱体化した習主席をある程度支えたほうがアメリカにかなう。今回の対応も、そうした意図に沿ったものと見るべきだろう。

レアアースという「錆びついた外交カード」

 今回の会談で中国のレアアース輸出制限は完全には解除されなかった。だが実際のところ、中国側はレアースという外交カードがほとんど使えない状態にある。この「伝家の宝刀」は、すでに錆びはじめている。

 会談直後、トランプ大統領は高市早苗首相に電話している。これは、高市首相が東南アジアで脱中国サプライチェーンの構築を進めていることと関連している。アメリカが習主席をコントロール下に置き、高市ルートで東南アジアの脱中国を進めている。