「ここでもいいや」とそのまま入国して、そのまま住み着いちゃった。

 サッパリ捨てると、次の世界がどんどん開けてきました。

寝泊まりする場所も決めずに
台北の街を歩いていると……

 鈴屋の役員を辞めて、たまたまトランジットで立ち寄った台湾に入国しただけなので、なんのコネもなし。

 職はもちろん、その日に寝泊まりする場所さえ決めていません。

 信じてくれない人が結構いますが、本当です。

 何もすることがないので、とりあえず台北の街をプラプラと歩いてみることに。

 すると、街角に立派な建物が見えてきて、近づくと「台湾総統府」と書かれている。

 さらに進んでみると、日本風の建物があって「経済部」と書かれてある。

「へぇ、こんなところがあるんだ」と興味を持って入ろうとしたら、守衛に止められてね。

「アポは取っていますか」

「取っていません。面白そうだから、中に入ってもいいですか」

「本日の見学は受け付けていません」

 そう言われるとますます興味が湧くものだから、口から出まかせがどんどん出てきます。

「台湾のために役立つ仕事を持ってきたんですが、誰か適当な人に会わせてくれませんか」

「約束がなければダメです」

「5分でいいから」

「だから、ダメなんです」

「台湾当局も器が小さいなぁ」そんな無茶苦茶なやりとりを続けていると、誰かが通りかかりました。

 僕の人生に何度も現れる菩薩の登場です。

なりゆきの瞬間を
必死で生きてみる

 台湾総統府の経済部の受付で粘っていると、

「どうしたの?困ったことでもありましたか?」

 と日本語で声をかけてきた女性がいました。さすが親日派の多い台湾人です。

 かくかくしかじかと説明すると、

「それじゃあ、私が話を聞いてあげてもいいんだけれど、今はダメだから2時間後にまた来て。訪ね先はこちらに」

 そう言って渡された名刺には、なんとか局長と書いてある。

「あの人、偉い人だったんだ。ラッキーだなぁ」

 なんて思いながら、外でお茶を飲んで再訪問しました。

 通された部屋の奥に座っていたのはさっきの女性。