筆者はこの本の出版前、『小説新潮』に連載していた80年代の終わりに山下洋輔にインタビューしたことがあります。場所は新宿3丁目、移転前の新宿ピット・インの近くでした。祖父の取材に熱中したことを楽しそうに話す山下洋輔の姿を覚えています。

独居房に畳・小机・洗面器...
監獄生活の細部を展示

 奈良監獄ミュージアムの展示は大きく分けて2つ。ひとつは建物そのものを歩く体験、もうひとつは刑事司法の歴史や受刑者の生活に関する資料展示です。

 公開されている第三寮(獄舎棟)の内部はほぼ当時の構造を残し、独居房が並ぶ廊下を実際に歩くことができます。一部の房では畳・小机・洗面器といった備品が再現されています。中央監視台にも立つことができ、放射状の各棟がどう見えるかを確かめられます。

 展示エリアはA~Dの4棟あり、建築史はA棟、明治~現代の刑事司法の変遷が文書・写真・映像を使って紹介するのがB棟です。受刑者の処遇がどう変わったか、刑務作業の内容、戦時中の監獄の状況なども取り上げられていました。

保存された舎房の廊下を歩く保存された舎房の廊下を歩く Photo by K.T.
五大監獄の模型五大監獄の模型 Photo by K.T.

アバンギャルドな作品展示
花輪和一『刑務所の中』とは

 C棟は8つの部屋とアトリウムで、展示テーマは「監獄とアート」でした。西尾美也ら6組の著名な美術家による比較的アバンギャルドな作品が並びます。驚いたのは、花輪和一の漫画が大きなパネルに拡大展示されていたこと。花輪和一は銃砲刀剣類不法所持と火薬類取締法違反で懲役3年の実刑判決を受け、札幌刑務所などに服役した経験があります。