クリエイティブな人種も
大学教授も大嫌い

 実家に帰ったフラニーは、一日中居間に引きこもり、カウチで猫を抱いて寝そべってばかりいるようになりました。母親がチキンスープを作り続けても、口にしようともしません。そんなフラニーを見ても、父は「フラニーは蜜柑を食べたいんじゃないかな」とふんわりしたことを言うばかりです。

 心配した母は、早く大学に戻るよう説得してほしいとズーイに頼みました。ところが若手俳優のズーイも、フラニーと同じくらい他人の承認欲求と凡庸さを憎んでおり、業界人とぶつかってばかりいるのです。

「おまえはね、誰かをすっかり気に入るか、あるいはぜんぜん受け付けないかどちらかだ」と母に言われたズーイは、フラニーと自分はフリーク(見世物の異形人間)だと語ります。

 インテリだった長兄と次兄に幼いころから高度な知識を仕込まれたズーイとフラニーは、他人の俗っぽさを受け入れられず、家族以外の誰とも親しくなれません。ズーイはフラニーを教え諭すどころか、口から出るのは「クリエイティブな人種」への悪口ばかりです。

 ズーイの毒舌に誘われるように、フラニーは大学や嫌いな教授の悪口を語り出します。「大学だって、この世の財宝を積み上げるための、愚かしく空虚な場所のひとつに過ぎない」。

 あらかたフラニーの悪意を吐き出させたところで、ズーイはこう告げました。システムに戦いを挑むつもりなら、素敵で知的な女の子のように撃つんだ、と。

 大学教授の髪型が気に食わないとか、個人を攻撃してなんになる。ズーイはフラニーが自分にそっくりだからこそ、フラニーの欠点がよくわかっていました。

 凡庸さやごまかしを避けようとする2人の自意識は、互いを傷つける方向に向かいます。

他人や自分の凡庸さを
許せるようになるには?

 ズーイはズーイである限り、フラニーを傷つけてしまいます。そこでズーイは演技力を駆使して、ある人物になりきることにしました。