社外取締役は不祥事を見張るだけではない

秋山 社外取は、日本では不祥事を防ぐためにいる人だと誤解されているように思います。しかし、本来はリスクを取る経営を後押しする役割が大きいわけですね。

円谷 社外取の人材の質についても議論があり、経営者経験のある人を入れるという要件は以前からありますが、不採算事業を切るとか、ここに集中投資すべきだといった判断ができる資本市場の経験者を取締役会に入れるべきだという提案がなされました。しかし、今回は見送られました。

秋山 現状では、弁護士や会計士といった守りの人材ばかりになりがちで、そこから「攻めのガバナンス」をイメージするのは難しい(笑)。モニタリングモデルに転換するのであれば、本来は資本市場に強い人材が必要なはずですね。

円谷 ええ。また、CGコード改訂とは別の、東京証券取引所のルール変更になるのですが、政策保有株を持ち合う(グループ会社などでの株の持ち合いのこと)関係にある企業から来ている社外取に2027年からは注記を付ける方向で進んでいます。

 旧財閥系企業や地方銀行系などの地方の有力企業では株式と人(社外取)の両方の持ち合いをやってきたところが多く、政策保有先の出身者に注記がつけられ、この注記が付いている候補者には機関投資家が反対票を投じるとなるとそのような企業への影響は非常に大きい。仮に社外取として選任自体はされても株主総会で投資家が選任議案に反対票を積み上げるので、賛成比率が大きく下がることになりかねません。

秋山 社外取を置いているという形式だけでは足りず、その人が本当に独立した立場で監督できるかどうかが問われるわけですね。ところで、社外取の人材が足りないという声をよく聞きますし、「キラキラした有名人」や有名大学教授ばかりが目立ったり、同じ人が複数の会社を掛け持ちしたりする例も散見されます。

円谷 人がいないというのは言い訳だと思っています。たとえばアメリカでは株主総会の招集通知に「お知り合いで、適任の人はいませんか」と広く取締役候補を募り、ニューヨーク証券取引所が一定の条件を満たした中堅の人材を社外取の候補者として登録するしくみがあります。中堅のビジネスパーソンが他社で社外取の経験を積んで、自社に戻ってCEOを務めた企業は収益性が高いという研究結果もあるくらいです。

 そういうしくみをつくることもせずに人材不足というのは、国や企業の努力不足です。企業側が求める条件を狭めすぎて、任期中に大過なくやってきた人ばかりほしがるから、人が足りなくなる。

 資本効率を上げましょうよと言える人は、引退した優秀なアナリストなど資本市場周りにいくらでもいますが、そういう人は経営陣にとって耳の痛いことを言うから嫌だというのが企業側の本音でしょう。ただ、今後、取締役会での社外取の数を過半数にすることが義務化される可能性もあり、そうなると、新しい人材が大量に必要になるので、自然と人材の発掘も進んでいくと思います。