報告書によれば、今回明らかになった不正の手口は大きく2つに分類されます。

 一つは、「会社名義のキャッシュカードを使い、会社の銀行口座から現金を引き出して自己のために流用する行為」。これは概ね、23年8月から24年12月まで行われていたといいます。もう一つは、「会社の銀行口座から自己名義の銀行口座へ振込送金して自己のために流用する行為」で、24年12月から約1年間、継続的に行われていました。

 会社口座から現金を引き出す手口による出金は、2023年に315万円から始まり、2024年には6330万円へと膨れ上がりました。24年に入ると、1日100万円の出金が連日続いています。振込による不正送金は、累計4億6000万円に達しました。

鍵と中身を知るのは1人だけ
「ブラックボックス」化していた上場企業の金庫

 不正行為が始まったきっかけは、前任の財務マネジャーが21年8月に退職したことでした。これ以降、金庫の鍵も中身も、実質的に元CFO1人が管理することになったのです。

 そのため、私用で現金を不正に引き出していながらも、現金は会社の金庫にきちんと保管されているように装うことが可能だったのです。

 例えば、元CFOは、部下にこんなメールを送っています。

お疲れ様です。○○です。
本日、以下の現預金の入出金を処理しました。現金実査表等、対応をお願いします。
・口座:575 出金90万円
・現預金 入金90万円
     -10,000円 X 90枚
・freeeの現金の摘要欄は、「金庫保管」と記載しておいてください。
○○

 実際には引き出された現金は元CFOの手元にあったにもかかわらず、帳簿上は「金庫保管」となるよう仕向ける……そうした行為が繰り返し行われていました。

 しかし、上場企業ですから当然、監査があります。どうやって切り抜けていたのでしょうか。

 報告書によれば、監査の節目には、露骨な調整が行われていたことがわかります。

 例えば、23年12月の監査法人トーマツの現金実査前には、元CFOが自ら約160万円を会社の口座に入金して帳尻を合わせました。